研究課題
本研究は、スパッタリング法において材料粉末をそのままターゲットとして利用することにより、安価で容易な薄膜の作製を目的として研究を行っている。2022年度は、ZnOとAl2O3による混合粉末をターゲットホルダーに充填した後、プレス圧力の大きさによってかさ密度の異なる(0.898~3.00g/cm3)粉体ターゲットを作製し、スパッタリング法によりSi基板およびサファイア基板上にAlドープZnO(AZO)薄膜の作製を行った。作製したAZO薄膜の構造、電気特性、光学特性を測定し、粉体ターゲットのかさ密度と薄膜特性との関係を調べた。X線回折測定の結果、いずれの薄膜も基板に対して垂直に成長したZnO (002)回折ピークが観測された。ホール効果測定では、n型導電性を示し、粉体ターゲットのかさ密度が大きくなるにつれてキャリア密度とホール移動度が増加することがわかった。また、かさ密度が3.00g/cm3のときSi基板上のAZO薄膜は1.35×10-3Ω・cmと最も低い抵抗率を示した。紫外可視光透過率測定において、サファイア基板上のAZO薄膜では可視光領域の平均透過率が80%を超えていた。これらの結果より、光デバイスへの応用の可能性を示す指標としてFOMを算出したところ、かさ密度が3.00 g/cm3において6.37×10-3 Ω-1を示した。その他、かさ密度を一定としZnOとAl2O3粉末の混合量を変化させて組成比の異なる粉体ターゲットを作製し同様の実験も行った。本研究では研究期間を通じて、混合粉体ターゲットを用いたスパッタリングプロセスの改善を行い、作製した薄膜は固体ターゲットと同等の性質を有することから、スパッタリング成膜に粉体ターゲットが適用できることを実証した。よって本研究で得られた成果は、新材料開発における開発期間の短縮化および低コスト化に寄与することが期待される。
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