研究課題/領域番号 |
20K03922
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
榊田 創 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (90357088)
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研究分担者 |
板垣 宏知 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (00793184)
清水 鉄司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70803881)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レーザーアブレーション / プラズマ / 内包フラーレン |
研究実績の概要 |
ボロン原子の特質に由来する毒性が課題となっている中性子捕捉療法用ボロン製剤に関して、低毒性の製剤生成に関する研究を行う。生体親和性の良い炭素C60フラーレンにボロン原子を内包化させることで毒性を大幅に低減する手法として、我々は原理的に高効率内包が可能なレーザー溶発による原子内包フラーレン生成システムを開発した。しかし、実用化にはフラーレンへの更なる高効率原子内包が必要であり、如何にして100 eV程度にピークを持つ粒子が多く生成できる条件を見出すかが鍵となる。そこで、高効率内包条件の探索、ボロン内包フラーレンの新たな計測法の開拓などを目的とする。 窒素原子をフラーレンに内包できることを原理的に実証したシステムの再立ち上げを行い、内包化実験を行った。本システムは、レーザー機器、真空排気装置、内包物質回転装置、フラーレン昇華装置、冷却機能付き生成物回収装置から構成されている。具体的には、装置内に設置した円柱状の内包用物質は連続回転駆動され、一部分からの溶発とならないようにしている。また、レーザー溶発によって生成される粒子群は、レーザーが照射された円柱部分の接線に対して垂直に噴出するため、生成物回収装置であるステンレス箔で巻いたモリブデンターゲットプレート中央にレーザー通過用の穴を設置している。このターゲットプレートは水冷管を通して水冷される。一方、フラーレン昇華装置により約800度で昇華されたフラーレンは、ステンレス箔上に堆積される。そして、昇華したフラーレンに溶発した粒子が入射される。内包物質としてボロンナイトライドを用いる。ステンレス箔上に堆積した物質の特性を調べるために、エネルギー分散型X線分析器(Energy dispersive X-ray spectroscopy;EDX)を用いた分析を進めた。また、高効率生成を実現するために、レーザー照射面積を可変し、実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響により、非常事態制限や出勤率制限などが生じたが、レーザーアブレーションによる内包フラーレン生成システムを立ち上げることができた。そして、高効率生成のために、レーザー照射面積を可変して内包実験を行った。更に、生成された物質の特性を調べるために、EDX分析を進めることができた。以上から、おおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、ボロン内包フラーレンの高感度計測法を開拓することを計画している。 ・引き続きEDXを用いて、堆積物の特性を調べる。この時、トルエンを用いてボロンなどを事前に分離する。 ・分析部が磁場型で、イオン化法が加熱(200℃まで)と電子衝撃イオン化である二重収束型質量分析装置を用いて、C60、N@C60、B@C60の計測を試みる。 ・放射光を用いた計測により、ボロン内包フラーレンの新たな評価方法を検討する。放射光装置にセットするためのサンプル形状が限られているため、そのサンプル作りを実施するとともに、実験申請を進める。 ・引き続き、高効率内包実験として、レーザーエネルギー、レーザー照射面積、パワーをそれぞれスキャンし、100 eV程度にピークを持つ粒子が多く生成できる条件を探索し、内包化実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、実験頻度が限られ、使用する消耗品量が少なかったことがあげられる。 レーザーを透過させる反射防止膜付窓は損傷するため、安全のために頻繁に交換する必要がある。C60フラーレン、ボロンロッドなどを購入する必要がある。ロッド回転部、真空システム消耗品などを購入する予定である。質量分析器消耗品、及び放射光施設において計測するための消耗品などを購入する予定である。
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