研究課題/領域番号 |
20K03927
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
原田 正康 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (40311716)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パリティ2重項模型 / カイラル対称性 / 核物質 / 中性子星 / 状態方程式 |
研究実績の概要 |
(1)パリティ2重項模型とNJL型模型の内挿手法の確立:以前に構築したパリティ2重項模型による低密度領域の状態方程式とNJL型模型による高密度領域の状態方程式の内挿手法を構成した。そして、中性子星観測から得られる内部の状態方程式への制限等を用いて、カイラル不変質量に制限をつけた。 [Phys. Rev. C 103, 045205 (2021)] (2)クォーク凝縮の密度依存性の解析: 上記(1)の模型の内挿領域で、カレントクォーク質量の変化に対する熱力学的ポテンシャルの応答としてクォーク凝縮を決定する手法を構築し、クォーク凝縮の密度依存性の解析を始めました。 (3)a0中間子の効果の解析: 上記(1)の模型を、I=1 の a0 中間子を含むように拡張し、a0中間子効果による中性子星物質の状態方程式の変化、及び、カイラル不変質量への制限の変化を解析し、カイラル不変質量制限の上限・下限が50MeV程度増加することを示した。結果は論文としてまとめている。 (4)ストレンジクォークを含むメソンの効果の解析: 上記(1)の模型を、ストレンジ・反ストレンジクォークから成る中間子を含むように拡張し、ストレンジクォーク凝縮の密度依存性の解析を開始した。 (5)パイ中間子凝縮相存在可能性の解析: 上記の(1)の模型から構成される高密度中性子性物質では、荷電化学ポテンシャルが大きくなり、パイ中間子凝縮が生じる可能性がある。2020年度はこの解析の基本的手法の構成を実施した。 (6)ヘビークォークを含むバリオンの崩壊幅の解析:軽いクォークに対するカイラル対称性に基づいて構成されたダイクォークと、チャームクォークまたはボトムクォークが束縛したヘビーバリオンの崩壊幅を解析し、イータ中間子放出崩壊が量子異常の効果によって抑制されることを示した。[Phys. Rev. D 102, 114004 (2020)]
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した項目(a)-(f)に関しての進捗状況を述べる。 「(a)パリティ2重項模型とNJL型模型の内挿手法の確立」:実績概要 (1)に示したように内挿手法は確立したと言える。また(2)にあるように、その手法を用いて内挿領域におけるクォーク凝縮の密度依存性を決定する手法も確立しつつある。 「(b)a0中間子の効果の解析」: 実績概要(3)に記載したように、解析はほぼ終えており、結果を論文としてまとめている。 「(c)ストレンジクォークを含むメソンの効果の解析」: 実績概要(4)にあるように、模型の構成をほぼ終え、高密度核物質中でのすトレンジクォーク凝縮の解析を開始した。 「(d)非一様カイラル凝縮相の解析」: この研究を始めるための準備中に、一様なパイ中間子凝縮相の存在可能性があることが判明した。そこで、実績概要(5)にある解析を開始した。 「(e)ハドロン質量の高密度核物質中でのスペクトル変化の解析」: 実績概要(6)にあるように、ヘビークォークを含むバリオンに対するカイラル有効模型を構成した。この模型と上記で構成している模型を組み合わせて、ヘビークォークを含むハドロンの高密度物質中でのスペクトル変化を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書に記載した項目ごとに今後の推進方法をまとめる。 「(a)パリティ2重項模型とNJL型模型の内挿手法の確立」: 内挿領域におけるクォーク凝縮の密度依存性を決定する手法の確立を目指す。「(b)a0中間子の効果の解析」: 解析の細部を詰め、論文としてまとめる。「(c)ストレンジクォークを含むメソンの効果の解析」: 模型のパラメータの取り方を変えた場合の解析を実施し、ストレンジクォーク凝縮の密度依存性の解析を進める。 「(d)非一様カイラル凝縮相の解析」: 計画調書の段階では一様パイ中間子凝縮の可能性がほぼないと考えていたが、初年度の解析で一様凝縮の可能性があることがわかった。そこで、非一様カイラル凝縮ではなく、前年度に引き続いて一様パイ中間子凝縮の解析を進める。「(e)ハドロン質量の高密度核物質中でのスペクトル変化の解析」:パイ中間子の高密度核物質中での資料変化の解析を開始する。この解析は, 上記(d)とも関連している。「(f)磁場の効果の解析」:磁場の効果を加えた場合の模型の構成を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で出張が不可能であったため、当初予定していた出張ができなかった。オンライン環境を充実させるため、物品費を増やしたが、結果として次年度使用額が生じた。次年度も当初予定通りの出張は不可能であると考えられる。そこで、博士課程大学院生で本研究に協力している者を、より研究に集中できるように研究支援者として雇用する計画である。
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