研究課題/領域番号 |
20K03937
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
二間瀬 敏史 京都産業大学, 理学部, 教授 (20209141)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 暗黒エネルギー / 超新星 / 重力波 / ハッブルパラメータ / 弱い重力レンズ |
研究実績の概要 |
近未来の大規模データとして本研究ではIa型超新星と銀河サーベイデータに着目し、それらを用いた暗黒エネルギーとニュートリノ質量への制限を得ることを目的としている.超新星データに関しては見かけの明るさに対する宇宙の大規模構による弱い重力レンズ効果と特異速度による効果を同時に考慮し、さらに最近観測が急速に進んでいる連星系の合体による重力波の観測結果を組み合わせた。その結果、暗黒エネルギーとニュートリノ質量へのより厳しい制限が得られることを示した。特に暗黒エネルギーの時間変化について従来よりもはるかに厳しい制限をつけることが可能であることを示すことができた。またこの研究の副産物として宇宙の大規模構造が引き起こす重力波源の特異運動による重力波源までの距離の分散が宇宙の膨張速度を決めるハッブルパラメータの値を非常に正確に決めることができることを示した。またこのことは、現在問題になっている大域的なハッブルパラメータと局所的ハッブルパラメータの大きな差が実際のものか、あるいは統計誤差によるものかを決める重要な役割を果たすことを指摘した。 銀河サーベイでは、莫大な数の背景銀河に対する宇宙の大規模構による弱い重力レンズ効果(宇宙シア)を検出して暗黒エネルギーへの制限を得る予定である。従来よりも厳しい制限を得るためこれまで用いられてきた背景銀河の形状測定法の高精度化を開発した。この方法を実際の観測データに適用するには大気の揺らぎを補正する必要があり、新たな補正法を開発し、現在論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超新星大規模データによる暗黒エネルギー、ニュートリノ質量の測定に関して、近傍の特異速度の影響を考慮したことで従来より精度のいい測定ができることが示された。さらに近傍の中性子星の連星系からの重力波観測を考慮することでさらに精度のいい測定ができることを示すことができた。 また銀河サーベイによる宇宙シアン測定において背景銀河の形状の高次モーメントを用いた形状測定を新たに開発したが、実際の観測データの応用には大気の揺らぎによる補正、CCDピクセルの光子雑音などの補正を必要とする.それらの補正の大部分に関しては経験的な適用なパラメータ調整による補正でなく第一原理からの補正を完成した。 またすばる望遠鏡の新たな主焦点カメラによる銀河、銀河団の重力レンズサーベイプロジェクトに参加して、新たな重力レンズ現象を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
超新星観測に対してこれまでの研究では冷たい暗黒物質を念頭に置いてきたが、最近話題になっている温かい暗黒物質への適用を考える。温かい暗黒物質の候補素粒子に対する質量の上限、あるいは下限を得ることを目標とする。銀河サーベイ関係では弱い重力レンズ効果の測定における背景銀河の高次モーメントを利用した新たな形状測定方法を実際の観測データに適用するため大気揺らぎの補正を完成する。現在進行中のすばる望遠鏡の大規模銀河サーベイデータへ適用するためのパイプラインの作成をおこなう。 また新たに開発した測定法をすばる望遠鏡ですでに取得している近傍銀河団の弱い重力レンズデータに適用し、これまで得られた暗黒物質部分ハローの再解析を行い、質量後tの部分ハローの数などの統計的性質を明らかにする。暗黒物質部分ハローの統計的性質は暗黒物質の性質に依存するため、温かい暗黒物質に対する制限が得られる可能性を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外研究機関への出張予定が各研究機関における自粛要請のため延期になったため。 延期になった国内出張を次年度に行う.
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