研究実績の概要 |
重力崩壊型超新星が放出するニュートリノ・重力波信号とその親星コア構造との関係を明らかにするため、特に親星内部の非球対称構造に着目して数値シミュレーションを実行した。使用する数値プログラムを大幅にアップデートし、ニュートリノの反応率と輸送計算をより精密化した。また重力に一般相対論的効果(A. Marek, H. Dimmelmeier, H-T. Janka, E. Mueller, R. Buras, (2006) ApJ, 445, 273)を近似的に取り入れた。この新しいコードを使用して空間3次元の重力崩壊シミュレーションを実行した。星内部の非球対称構造を考慮した25太陽質量親星モデル(T. Yoshida, T. Takiwaki, K. Kotake, K. Takahashi, K. Nakamura, H. Umeda (2019) ApJ, 881, 16)を初期条件として、内部の対流構造を取り入れたモデルと球対称初期条件から計算を開始したモデルを比較したところ、衝撃波の復活時刻等に差異が見られた。対流層の底部が重力崩壊によって中心に落下し、停滞した衝撃波に触れるタイミングで衝撃波が膨張に転じることを発見した。爆発的元素合成によってニッケル56などの重元素を観測量と同程度生成するには、できるだけ早く衝撃波が復活することが望ましい(R. Sawada and K. Maeda (2019) ApJ, 886, 47)。今回の結果は、親星内部の非球対称構造が観測と理論モデルのギャップを埋める可能性を示唆するものである。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の計算で得られたニュートリノ・重力波信号から観測イベント数を算出する。申請者はすでに、系内超新星からのマルチメッセンジャー信号の観測に関する研究をおこなった実績がある(Nakamura et al. (2016) MNRAS, 461, 3296)。本研究の算出方法は基本的にこの論文に準ずる。地球に到達した重力波信号のSN比および反電子型ニュートリノによる逆ベータ崩壊イベント数を算出し、各親星に対応する観測イベント数の時間発展データを作成する。並行して可能な限り幅広い初期条件(質量、非球対称内部構造の有無、回転)を網羅すべく、引き続き重力崩壊型超新星の空間3次元数値シミュレーションを継続する。
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