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2020 年度 実施状況報告書

超新星起源マルチメッセンジャー信号の解析に向けた数値モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K03939
研究機関福岡大学

研究代表者

中村 航  福岡大学, 理学部, 助教 (60533544)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード超新星 / 数値シミュレーション / マルチメッセンジャー天文学
研究実績の概要

重力崩壊型超新星が放出するニュートリノ・重力波信号とその親星コア構造との関係を明らかにするため、特に親星内部の非球対称構造に着目して数値シミュレーションを実行した。使用する数値プログラムを大幅にアップデートし、ニュートリノの反応率と輸送計算をより精密化した。また重力に一般相対論的効果(A. Marek, H. Dimmelmeier, H-T. Janka, E. Mueller, R. Buras, (2006) ApJ, 445, 273)を近似的に取り入れた。この新しいコードを使用して空間3次元の重力崩壊シミュレーションを実行した。星内部の非球対称構造を考慮した25太陽質量親星モデル(T. Yoshida, T. Takiwaki, K. Kotake, K. Takahashi, K. Nakamura, H. Umeda (2019) ApJ, 881, 16)を初期条件として、内部の対流構造を取り入れたモデルと球対称初期条件から計算を開始したモデルを比較したところ、衝撃波の復活時刻等に差異が見られた。対流層の底部が重力崩壊によって中心に落下し、停滞した衝撃波に触れるタイミングで衝撃波が膨張に転じることを発見した。爆発的元素合成によってニッケル56などの重元素を観測量と同程度生成するには、できるだけ早く衝撃波が復活することが望ましい(R. Sawada and K. Maeda (2019) ApJ, 886, 47)。今回の結果は、親星内部の非球対称構造が観測と理論モデルのギャップを埋める可能性を示唆するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画では、空間2次元の超新星シミュレーションを大量の親星モデルに対して実行する予定であった。しかし近年、Princeton大学のグループが多数の3次元超新星モデルの作成に成功するなど、超新星の理論研究の潮流は完全に3次元モデルに移行した。これを受けて当初の計画を1年間前倒しし、初年度から3次元計算に取り掛かることにした。SN 1987Aという最もよく調べられている超新星に対応する親星モデルを初期条件にして空間3次元の重力崩壊シミュレーションを実行し、その流体運動とニュートリノおよび重力波放射、さらに爆発的元素合成に至るまで詳細に解析することができた。

今後の研究の推進方策

初年度の計算で得られたニュートリノ・重力波信号から観測イベント数を算出する。申請者はすでに、系内超新星からのマルチメッセンジャー信号の観測に関する研究をおこなった実績がある(Nakamura et al. (2016) MNRAS, 461, 3296)。本研究の算出方法は基本的にこの論文に準ずる。地球に到達した重力波信号のSN比および反電子型ニュートリノによる逆ベータ崩壊イベント数を算出し、各親星に対応する観測イベント数の時間発展データを作成する。並行して可能な限り幅広い初期条件(質量、非球対称内部構造の有無、回転)を網羅すべく、引き続き重力崩壊型超新星の空間3次元数値シミュレーションを継続する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の流行によって、参加を予定していた全ての国際学会が中止や延期となった。また国内の学会・研究会も全て中止またはオンラインでの開催となり、使用する予定で計上していた旅費を使わない見通しとなった。そこで初年度の未使用額と2年目の使用額を合算し、大型の高速計算機を導入する。超新星の3次元モデル計算は国立天文台のスーパーコンピュータCray XC50で実行するが、並行してポストプロセスの解析計算と核反応ネットワーク計算を効率よく進める。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 現実的な3次元超新星モデルに向けて2021

    • 著者名/発表者名
      中村航
    • 学会等名
      第7回超新星ニュートリノ研究会
  • [学会発表] 大質量星の重力崩壊前後を追う一貫した数値シミュレーション2021

    • 著者名/発表者名
      中村航
    • 学会等名
      CfCAユーザーズミーティング
  • [学会発表] Gravitational wave signal based on a realistic core-collapse supernova model2021

    • 著者名/発表者名
      Ko Nakamura
    • 学会等名
      Gravitational wave physics and astronomy: Genesis, The 4th Annual Area Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] 超新星親星の非球対称構造が衝撃波に及ぼす影響2021

    • 著者名/発表者名
      中村航
    • 学会等名
      日本天文学会2021年春季年会
  • [学会発表] 現実的な3次元超新星モデルに基づく超新星背景ニュートリノ解析2020

    • 著者名/発表者名
      中村航
    • 学会等名
      地下宇宙領域研究会
  • [学会発表] 大質量星の非対称構造を考慮した重力崩壊計算2020

    • 著者名/発表者名
      中村航
    • 学会等名
      第33回理論懇シンポジウム

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公開日: 2021-12-27  

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