重力崩壊型超新星が放出するマルチメッセンジャー信号(ニュートリノ・重力波や爆発後に残す中性子星の特徴を含む)とその親星コア構造との関係を明らかにするため、使用する数値プログラムを大幅にアップデートし、ニュートリノの反応率と輸送計算をより精密化した。また重力に一般相対論的効果を近似的に取り入れ、次の3つの初期条件をターゲットとして大質量星重力崩壊の空間3次元のニュートリノ輻射流体計算を実行した。 (1)星内部の非球対称構造を考慮した25太陽質量親星モデルを初期条件として、内部の対流構造を取り入れたモデルと球対称初期条件から計算を開始したモデルを比較したところ、衝撃波の復活時刻等に差異が見られた。対流層の底部が重力崩壊によって中心に落下し、停滞した衝撃波に触れるタイミングで衝撃波が膨張に転じることを発見した。 (2)赤色超巨星から青色超巨星への進化や表面組成の異常などのSN1987A親星の特徴をよく再現する最新の連星進化モデルを採用した。空間3次元計算で衝撃波の膨張とやがて超新星爆発に至るであろう結果を得たが、その爆発エネルギーは観測値の10%程度に留まり、合成されたニッケル56の質量も観測からの推定値の15%程度であった。一方で中心に残された中性子星の質量やスピン率は標準的な中性子星の値であった。 (3)数値プログラムをさらに改良し、磁場を考慮した重力崩壊の3次元磁気流体計算を実行した。幅広い質量を持つ16個の親星を使用し、バウンス後0.5秒まで計算して衝撃波の時間発展にともなうニュートリノ・重力波放射を見積もった。銀河中心で超新星が爆発したと仮定して観測量を見積もり、観測から親星構造を識別できる可能性を示した。
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