物質と反物質の非対称性を説明する有力な理論は、日本の柳田・福来氏が提案したレプトジェネシス機構である。右巻きのニュートリノは非常に重く、例えば10^10GeV以上だと考えられている。初期宇宙で温度がさらに高かったと考えると、この重い右巻きニュートリノも作られたに違いない。そしてそれがいずれ崩壊する際にCPの破れを拾い、物質への崩壊と反物質への崩壊の確率がわずかに違うことを用いる。その結果宇宙に物質と反物質の非対称性が生まれたというわけである。 村山はレプトジェネシス機構の新たな間接証拠として、重力波を提案した。シーソー機構を実現する模型を数学的に分類した結果、重いニュートリノの質量が生成される相転移の際、Type II 超伝導体と同じように磁束が作られ、「宇宙ひも」となる理論が過半数であることわかった。しかも加速器などの低いエネルギーから高いエネルギーを探る方法と逆に、重力波では高いエネルギーの方が信号が強く、高いエネルギーから低いエネルギーを探る相補的な役割を果たす。さらにその後相転移で作られた位相欠陥は紐に限らず他の可能性もあり、さらには位相欠陥の中に別の位相欠陥ができる、ということもある。この場合も重力波のスペクトルに特徴的な信号が現れる。これを系統的に調べ、別の論文で出版した。 一方レプトジェネシスではなくもっと低いエネルギーで物質・反物質非対称性を説明する理論もある。この場合は物質・反物質非対称性と暗黒物質が関係する可能性があり、そうした具体的な模型を提案した。その場合加速器や宇宙論でさまざまな信号が期待されるが、それに加えて第一次相転移からの重力波も期待され、特徴的な波長にピークを持つスペクトルが予言される。 このようにさまざまな物質・反物質非対称性を説明する理論で重力波の信号が現れることを発見し、論文で発表することができた。
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