研究課題
本研究課題は核分裂片に現れる荷電偏極を非経験的な理論手法で導出し、任意の核分裂生成核種に適用し荷電偏極の理論データ基盤を開発する事である。核分裂する親核の陽子数(Z)と核子数(A)の比が分裂後も不変である仮定をUCD仮定(unchanged charge distribution)と呼ぶが、核分裂後に放出される中性子の収量を再現する為には、核分裂片のZ/AがUCD仮定から僅かにズレている必要がある。このズレは荷電偏極と呼ばれている。荷電偏極は典型的には±0.5程度であるが、放出される中性子収量に大きな影響を与える。荷電偏極はデータライブラリに採録され応用されているが、原子核理論による裏付けはなく、任意の核分裂生成核種に予言能力はない。そこで非経験的にこの核データを得られる理論的手法の開発を行った。2020年度では静的微視的平均場模型を用いてウラニウム-236の分裂片の配位を記述し、核構造の反映が示された。しかし、即発中性子収率への影響が大きい、軽い(A~90, または重い)分裂片の荷電偏極が十分に得られない事を発見し、動的効果の必要性が示唆された。2021年度では時間依存平均場模型による、動的効果を含めた核分裂片を記述する模型の開発を行った。結果、等エネルギー面の配位を初期状態にすることで、有限の荷電偏極が現れる事が分かった。2022年度では得られた荷電偏極の値を統計崩壊計算に入力し、即発中性子数を導出する方法の開発を行った。また、分裂に至る変形に対するポテンシャル面の相互作用依存性を調べた。ただし、新型コロナウィルスの影響により研究打ち合わせが困難になり、計算機のトラブルによる遅延が発生した為、2023年度への延長を申請した。2023年度では動的方法で得られた荷電偏極を入力し、ウラニウム-236の分裂片の即発中性子多重度の平均値が得られる事を確認し原子力学会で発表した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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