研究課題/領域番号 |
20K03945
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松尾 正之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70212214)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 中性子星内殻 / 中性子過剰原子核 / 近接効果 / 励起状態間遷移 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、原子核密度汎関数理論に基づいて以下の2つの研究計画している。 第1は、連続状態準粒子乱雑位相近似(QRPA)理論に基づいてr過程元素合成に関わる中性子過剰原子核の中性子直接捕獲反応を記 述する理論を構築し、集団励起を経由する中性子捕獲過程の特徴と中性子捕獲反応への影響を理論予測することである。令和2年度は、最初のステップとして、既に定式 化してある基本的枠組みを拡張し、捕獲によって生成された集団状態と基底状態の間の電磁遷移に加え、集団状態から低励起集団状態への電磁 遷移を記述する連続状態RPA理論の定式化が完成したので、論文を投稿した。 第2は、中性子星内殻における核子集団励起モードをQRPA理論で記述することで、内殻物質の弾性率や熱伝導率などの巨視的物性を 密度汎関数理論に基づいて導出し、その物理機構を分析することを目指したものである。この研究において、内殻物質を構成する原子核クラスターと中性子超流体との相互作用の解明が焦点の一つである。令和3年度は、基底状態における対凝縮密度を中心に分析した。特に、近接効果に着目し、近接効果距離は多くの場合小さいが、内殻の上層部と下層部では、格子定数と同程度になる密度領域が存在する可能性があることを見出した。この成果は論文として発表した。また、本課題と関連して内殻物質のヒッグスモードに着目する発想を新たに得た。内殻物質の前段階として原子核におけるヒッグスモードの研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画で掲げた2つの研究について、第1については想定通りの進展があり論文投稿まで達成できた。第2についても、論文発表となった点は確実な達成と言える。一方、内殻物質の物性の分析の第1段階としている集団質量の分析の進展は想定より遅れたが、一方で、ヒッグスモードの研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
直接中性子捕獲の研究については、数値計算が予想以上に大規模となることが判明したために計算サーバーの購入計画を変更したが、新年度冒頭に購入済みであり、今後数値計算も含めて着実に進展させたい。また、内殻物質については、ヒッグスモードの研究をさらに進めると同時に、集団質量の研究を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表と研究打ち合わせを計画していたが、コロナ禍のために一部はオンラインで実施し、また、一部は実施できなかったため、旅費が未使用となった。また、購入予定の計算サーバーに関しては、計算規模が想定していたものより大きくなったため想定以上の高額製品が必要となり、予算を繰り越して2年目に交付される予定の経費と合わせて購入することした。
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