研究課題/領域番号 |
20K03948
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 恒一 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定助教 (10730252)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁気流体力学 |
研究実績の概要 |
相対論的重イオン衝突実験や中性子星の物理における強磁場の効果が注目されている。本研究では、それらの系において強磁場の効果が顕著になると期待される輸送現象の理解を深める事を目的としている。強磁場中の輸送理論として磁気流体力学が知られており、本研究の基盤となる理論的枠組みである。昨年度の研究成果では、系の対称性と保存則の観点から相対論的磁気流体力学の定式化を根本的に見直した。 種々の教科書では、連続の式(オイラー方程式)とマクスウェル方程式を連立することで磁気流体力学が定式化されている。ただし、ジュール熱とローレンツ力が発生することから、連続の式にはエネルギーと運動量の湧き出し項が加えられる。マクスウェル方程式においては電流が電場の源となっている。したがって、双方の方程式とも湧き出し項を持つ「非保存」の式になっている。ところが、流体力学は長い時間・空間のスケールで重要となる保存量のダイナミクスを記述する枠組みであって、系の「対称性と保存則」に立脚した有効理論である。この点で、従来の磁気流体力学の定式化は、流体力学の基本概念に立脚した定式化になっていない事を明確に指摘した。その上で、QEDが持つグローバル対称性に基づいて相対論的磁気流体力学の再定式化を行った。並進対称性及び磁気的一次形式対称性(magnetic one-form symmetry)は、電磁場と物質場の寄与を合わせた系の全エネルギー・運動量の保存に加えて、磁力線の保存を保証している。場の量子論(QED)から非平衡統計力学による微視的な導出を行う事で、熱力学的な不等式も演繹的に導出することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
磁気流体力学の理解は進んでいるが、当課題の重要な要素である重クォークの不純物効果を取り入れた解析の部分で遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
重クォークの不純物効果を取り入れる解析を優先して推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、研究代表者の出張、及び情報収集のための専門家の招聘が叶いませんでした。そのため、旅費と人件費・謝金としての支出がなかったために残額が生じました。これらの研究上の不便を補うため、オンラインでのセミナーや研究打ち合わせに必要な物品を整備しましたが、それでも残金が生じました。次年度に出張や招聘が可能になる事を期待します。
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