研究課題/領域番号 |
20K03949
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉岡 興一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80363323)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 素粒子論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はニュートリノの性質を通じて世代の謎をはじめとした標準理論の謎に迫ることである。そのためニュートリノに関わるようなスカラー場の力学を中心に、これまでに捉えられていなかった側面から多角的に追究する。中心課題となるスカラー場は、宇宙論的帰結からマヨラナ位相や世代構造などを通じてさまざまな現象を生み出す。そのため多様なエネルギースケールや検出方法を用いて集約した検証が行えることは大きな利点である。以下今年度の各研究内容を述べる。軽いニュートリノの質量は、いわゆるシーソー機構を通じて右手型ニュートリノから生み出されると考えられる。そのため右手型ニュートリノに質量を与えるスカラー場と湯川相互作用が存在するが、その宇宙論的な効果のひとつとして右手型ニュートリノが軽い擬南部ゴールドストーンスカラーを含む3体崩壊する過程により宇宙のバリオン数非対称性が生成される可能性を指摘した。必然的に非常に軽いスカラー場が現在も存在することを示唆するため、この可能性を通じた暗黒物質・物質生成・フレーバー物理・世代物理の関係性に注目している。また、マヨロンやアクシオンなどの擬南部ゴールドストーンの生成・検証はひも状ソリトンとの関連が重要である。とくにひもが超伝導電流をもつような解を構成し、その力学を考察した。さらに電流の担い手であるゼロモードの量子論的な安定性を解析することで、超伝導ひも状ソリトンが我々の宇宙に存在しうるかどうかを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの宇宙のインフレーションや暗黒物質とはまた別の切り口として、物質生成や世代の物理および宇宙ソリトンなどの側面から右手型ニュートリノに関わるスカラーの物理に取り組んだ。三位一体性から多角的に解明を目指す課題として十分な進展が得られていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ニュートリノ質量に関わるスカラー場の性質を明らかにしてゆくために、スカラー場の力学と実験観測的な側面との関わりに取り組む必要がある。暗黒物質の直接・間接探索実験、ニュートリノ振動実験、加速器実験の結果と照らし合わせることが重要と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症による種々の制限の為。次年度に高速計算機器の導入を検討し研究計画を促進させる。
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