研究実績の概要 |
本研究課題では、日本の大強度陽子加速器施設(J-PARC)や米国のJefferson研究所で行われ、また、計画されているハイパー核の高精度な生成実験に対し、研究代表者らが開発した、低励起から中高励起にわたるハイパー核の微細な構造を明らかにできる拡張殻模型計算法を用いて、理論的、系統的に分析と予測を行う。4年間を通して、ハイパー核のp殻領域からsd殻領域へと研究を展開し、p軌道のΛ粒子に着目して、sd殻領域の多様なコア構造におけるp軌道のΛ粒子のダイナミクスの視点から、sd殻ハイパー核の微細な構造を解明する。 研究代表者らが開発した拡張殻模型計算法は、Jefferson研究所で測定されたΛ10Beに対してすでに適用し、実験で報告された新たな状態の説明に成功している。最終年度である2023年度は、sd殻の中央付近にあるΛ27Mgにおいて、変形した原子核コアによりΛ粒子のp軌道が分岐することを示した。これはp殻ハイパー核、Λ9Be、Λ10Be、Λ11Bでも示唆されている現象である。また、Jefferson研究所で実験可能な、電子線によるΛ27Mgハイパー核の生成断面積を示すとともに、 J-PARCでのπ中間子によるΛ27Mgハイパー核の生成の理論予測を示した。Λ20Neについても、計算は十分ではないが、今後の実験に向けての理論予測を示した。 研究期間全体を通して、軽い方ではp殻ハイパー核におけるΛ粒子のp軌道の分岐がコアの変形とともに大きくなることを生成断面積の計算を通して示し、重い方ではJefferson研究所で実験が計画されているΛ40,48Kハイパー核の生成断面積を予測し、これらの間にあるΛ27Mg、Λ20Neも含めて、実験と関わりの深い生成断面積を一つの軸としてハイパー核の構造を明らかにすることができた。
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