研究実績の概要 |
ダブルストレンジネス核などの生成・崩壊を理論的に解明することを目的に,生成反応スペクトル計算のための歪曲波インパルス近似の枠組みの精密化と計算コードの開発を行った。最終年度(2023年度)の研究成果として, 6Liを標的とした(K-, pi-)と(pi+, K+)反応による6Li_Λハイパー核の生成スペクトルをLCAO基底による多重チャンネル結合法で計算し,高励起領域の実験データを良く再現できることを示した。 本研究期間において得られた主な研究成果は以下の通り:(1)原子核を標的にした(K-, K+)反応によるΞハイパー核の生成スペクトルに「最適化フェルミ平均」の方法を適用して,核内媒質効果による特有のエネルギー依存性を持つことを示した。(2)9Beを標的にした(K-, K+)反応によるΞハイパー核の準自由スペクトルを解析し,Ξと芯核との間のポテンシャルは実部の深さが約17MeVの引力であることを示した。(3)精密な中間子歪曲波を用いて, 12C,28Si,58Ni,115In,209Biを標的とする(pi-, K+)反応によるΣハイパー核生成スペクトルを計算し,標的核の質量依存性や生成断面積の絶対値の実験データを再現することに成功した。(4)核物質中のΣN→ΣNとΣN→ΛNの反応断面積と有効質量を用いた枠組みで,Σと芯核との間の光学ポテンシャルの実部と虚部を求め,準自由スペクトルのエネルギー依存性を良く再現した。(5)歪曲波による核内局所運動量を考慮することで「最適化フェルミ平均」の方法が(K-, pi-)反応にも適用可能であることを示した。 これらの結果から,理論計算の精密化と計算コードの開発が進んだことが確認された。今後は,現在データ解析中のJ-PARC E05実験での12Cを標的にした(K-, K+)反応によるΞハイパー核の生成スペクトルの計算を継続して行っていく。
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