研究課題/領域番号 |
20K03957
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
藤本 信一郎 熊本高等専門学校, 電子情報システム工学系CIグループ, 教授 (10342586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 元素合成 / 重力崩壊型超新星爆発 / 超新星残骸 / ニュートリノ |
研究実績の概要 |
本研究では、非対称ニュートリノ放射を伴う重力崩壊型超新星爆発における元素合成を、様々な質量をもつ親星に対して系統的に調査し、その結果を近い将来の超新星残骸のX線・γ線観測と比較することによって、理論的に示唆された非対称ニュートリノ放射の有無を明らかにし、ニュートリノ非球対称度を推定することを目的としている。 令和4年度には、重力崩壊型超新星爆発における速いニュートリノ振動の元素合成への影響を調査し、その影響が無視できない可能性があることを明確にした。なお「当初計画」策定時には、重力崩壊型超新星爆発自体に対する速いニュートリノ振動の影響は明確ではなかったが、近年の研究により重力崩壊型超新星爆発への影響が明確になりつつあり元素合成への影響も小さくはないと予想されたため、「当初計画」を変更し、速いニュートリノ振動の元素合成への影響についての調査を行った。 上記の成果は、日本天文学会2022年秋期年会および学術論文にて発表された(本報告書 「10.研究発表(令和4年度の研究成果)」【雑誌論文】1件目、【学会発表】1件目)。 さらに今年度打ち上げ予定のXRISM衛星のXRISM Guest Scientistに応募し、重力崩壊型超新星残骸チームとして採択された。XRISM Guest Scientistは観測最初期のデータにアクセスすることができる。本研究で理論的に得られた結果と観測結果を比較する際に、重力崩壊型超新星残骸チームに参加することは非常に有益である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度には、上記「研究実績の概要」に記載したように「当初計画」を変更し、近年重力崩壊型超新星爆発自体への影響が明らかにされ、本研究目的達成への影響が無視できない可能性がある速いニュートリノ振動の元素合成への影響を明確にし、その研究成果を学会で発表し(本報告書 「10.研究発表(令和4年度の研究成果)」【学会発表】1件目)、学術論文として出版した(本報告書 「10.研究発表(令和4年度の研究成果)」【雑誌論文】1件目)。 その一方、(1) 当初想定していなかった速いニュートリノ振動の元素合成への影響に関する研究にそれなりの時間を要したこと、(2) (コロナ禍の状況変化に伴って)校務が多忙になったことにより、令和4年度に予定していた研究を遂行できなかった。このため「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には、「当初計画」の最終年度実施予定の内容を実施する。まずは主に令和4年度までに行った重力崩壊型超新星爆発の際に放出される核γ線・電子捕獲X線に関する研究を論文としてまとめる。次に3D超新星爆発・元素合成計算を行う。特に個々の超新星残骸との比較を見据えた少数の親星・3つ程度のニュートリノ非球対称度に対して、計算を行い、研究成果を学会・研究会にて発表する。 最後に、令和4年度までに行った非球対称ニュートリノ放射および速いニュートリノ振動を考慮した重力崩壊型超新星の多次元爆発・元素合成計算から得られたNi/Fe・Zn/Fe比の理論値に対して、XRISM衛星を用いた若くて明るい超新星残骸におけるNi/Fe・Zn/Fe比の観測可能性を定量的に評価し、XRISM衛星での重力崩壊型超新星残骸の最初期観測結果と比較する。さらにその結果を踏まえて、重力崩壊型超新星残骸におけるNi/Fe・Zn/Fe比のXRISM衛星による公募観測提案を検討する。 併せて、まずは球対称ニュートリノ放射の場合に、次に非球対称ニュートリノ放射の場合について、様々な質量の親星・少数のニュートリノ非球対称度に対して3D超新星爆発・元素合成計算を行い、2D計算と比較し、元素合成に対する軸対称性の影響を定性的・定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で参加を予定していた学会・研究会が中止もしくはオンラインでの開催になり旅費の支出がなかったため。併せて、半導体不足に伴う計算用ワークステーションの高騰および校務多忙に伴う研究の遅れのため購入を一部延期したため。
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