研究課題
太陽系に存在する重元素は、γ過程(p過程)、s過程、r過程、ν過程、νp過程と呼ばれる複数の元素合成過程に起源を持つ原子核からできていると解釈される。これらのうち、原子核の安定線から陽子過剰側に位置してアイソトープ比が異常に大きいp核元素と呼ばれるモリブデン(Mo)とルテニウム(Ru)の起源は解明されていなかった。本研究により、極超新星爆発のジェット中で起きるνp過程で定量的に説明できることを明らかにした。また、νp過程は、トリプルα反応で作られる炭素12のホイル共鳴状態が高密度下で起きる核子との相互作用による脱励起反応で著しく阻害されると考えられてきたが、ニュートリノ振動を考慮することにより、高い物質放出率を持つ極超新星の爆発的元素合成ではこの困難が起きないことを示した。r過程の起源天体に関しては、太陽系組成の約90%が、コラプサーと呼ばれブラックホールを残す爆発天体とMHDジェットと呼ばれ中性子星を残す磁気回転駆動型の超新星で作られ、残る10%が宇宙進化上ごく最近になって中性子星連星系合体で作られるとの結論を得た。この結果を銀河化学進化に応用し、初期宇宙から太陽系形成期に至るまで、コラプサーとMHDジェット型超新星からの寄与が支配的であることを明らかにした。さらに、コラプサーでの爆発的r過程に続いて、超ウラン元素の核分裂から生じる多量の中性子による二次的な核反応によってi過程およびs過程が起き、質量数が150近傍の一連の希元素の組成パターンに強い偶奇性が現れることを見出した。これらの研究成果を複数の論文として国際ジャーナル誌に発表した。さらに、これらの理論的研究に基づいて、不安定原子核反応の実験的研究および天体観測による理論予測の検証を目指す理論・実験・観測を横断する共同研究プロジェクトを提案した。
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