研究実績の概要 |
この研究課題が始まった 2020 年4月の時点で、ミューオンの異常磁気能率 (muon g-2) に対する理論値(素粒子標準模型からの予言値)と実験値との間には 3.7 シグマの不一致があることが知られていた。もしこの不一致が理論計算や実験の間違いではなく正しい数字であれば、標準模型を超える新物理の存在を示唆している可能性がある。この 3.7 シグマという数字が本当に信頼に足る数字なのかどうかを判定するには、muon g-2 に対する理論値をより詳しく調べることによって理論値の信頼性を上げることが必要である。この研究では muon g-2 に対する標準模型の予言値の信頼性および精度を改善することを主目的とする。 2022 年度も前年度に引き続き、数値計算の信頼性を高めるため、muon g-2 へのハドロンの寄与を計算するプログラムと、それを計算するのに不可欠な QED running coupling へのハドロンの寄与を計算するプログラムの改良を進めた。とくに、QED running couplingのハドロンの寄与の値を返す fortran サブルーチンを、2020 年に出版された我々の論文 (A. Keshavarzi, D. Nomura, T. Teubner, Phys. Rev. D101 (2020) 014029) で使った実験データに準拠するようにアップデートした。従来の我々のサブルーチンは 2018 年の論文 (A. Keshavarzi, D. Nomura, T. Teubner, Phys. Rev. D97 (2018) 114025) に基づくものだったが、これら2つの論文で使ったデータの差は軽微であるため、fortran サブルーチンの更新が後回しになっていたのをこのたび更新したものである。
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