研究課題/領域番号 |
20K03961
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金森 逸作 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (60399805)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 格子QCD / マルチグリッドソルバー |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず前年度に引き続き、既存のクローバーフェルミオン向けマルチグリッドソルバーをもとにコードフレームワークの拡張をすすめた。コードセット Bridge++ の開発メンバーの協力も得て複数のアーキテクチャ向けの実装をすすめ、インテル機(AVX512,AVX-2)、A64FX(「富岳」など)、GPU機向けの実装を用意した。とくに「富岳」向けでは、「富岳」のコデザインの一環で開発されたソルバーライブラリQWSの一部を組み込むことで大幅な高速化を実現した。QWSで用いられている領域分割型の前処理を、マルチグリッド前処理の一部(smoother と呼ばれる処理)として利用した。当初の想定した実装とは異なり、粗い格子の作成に用いる領域分割と QWS 由来の領域分割が異なる実装となったが、この組み合わせの成功は昨年度から改良を進めたフレームワークの柔軟さの証左になっている。これらの成果は国際会議 ICCSA 2021 や Lattice 2021 などで報告した。 ドメインウォールフェルミオン向けのソルバーについては、文献調査を進めテスト実装の準備中である。また、様々な試行に適した、十分に高速なドメインウォールフェルミオン演算子(疎行列ベクトル積演算)の整備を進めている。 クローバーフェルミオン向けのマルチグリッドソルバーの実装、高速なドメインウォールフェルミオン演算子の実装は、ともに Bridge++2.0 の一部として近日中に公開予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コードの可搬性・柔軟性を保つための枠組みの改良に、想定以上に時間がかかってしまった。また、とくに「富岳」向けの実証コードは、プロダクションランからで使いたいという需要があったため、実用に供するための作業に時間を取られている。
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今後の研究の推進方策 |
ドメインウォールフェルミオン向けのアルゴリズムについて、たたき台となる実装を進める。小さな格子(8x8x8x8程度)で、マルチグリッド前処理に対する応答を固有モード展開を用いて検証する。実装は、A64FX(「富岳」など)を優先し、次いでインテル機向けの実装を通じて構造の可搬性を担保する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響で、参加を予定していた国際会議・国内学会等がことごとくオンライン開催になり、旅費としての支出がほとんどなくなってしまった。また講師への旅費のような支出もなかった。ワクチンの接種が進むなど昨年度よりも状況が良くなっているので、国内外の研究会や国際学会などに参加して成果の発表や最新の情報の収集に充てたい。また、状況次第で、データバックアップ環境やオンライン発表のためのツールの強化も検討している。
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