研究課題/領域番号 |
20K03962
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 幾芳 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (20109416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 複素座標スケーリング法 / チャネル結合 / 位相差 / スペクトル表示 / 共鳴状態 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、複素座標スケーリング法を用いて散乱行列のスペクトル表現を求め、結合チャンネル系の共鳴・散乱状態の分析と共鳴・散乱機構の新たな理解を得ることである。昨年度は、チャンネル結合系4He:(3H+p)+(3He+n) の位相差をスペクトル表示することを行った。その結果、3P0状態に関する位相差を除いて、以前の結果とよく一致する結果が得られた。 本年度は、なぜ3P0状態の結果だけが以前の結果と異なるのか、3P0状態の(3H+p)と(3He+n)の各チャンネルにおける位相差を観測データと比較し、その振る舞いの根拠を解明した。位相差のスペクトル表示によって得られる共鳴状態とバックグランド状態からの寄与を分解し、3P0状態の(3H+p)と(3He+n)のチャンネルの位相差のエネルギー依存性を理解することができた。それらの成果・結果は論文として公表された。 また、本研究課題の2番目の目的である共鳴状態の部分幅の計算を行うため、複素座標スケーリング法を用いた散乱行列(T行列)の新たな計算方法を開発を進めてきた。この新たな方法を用いることによって、共鳴状態の部分幅を求めることが出来るだけでなく、チャンネル結合系の一般化と共に、多体散乱の記述を可能になることが分った。 本研究プロジェクトはモンゴル、カザフスタン、ウクライナとの国際共同研究の1つであるが、コロナ感染が収束しないため、研究はすべてインターネットを通じたメール交換やリモート会議による情報交換や議論によって行われてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ・ウイルス感染が収まらず、研究打ち合わせや得られた結果についての議論はもっぱらインターネットを通じてオンライン会合で行って来た。これまでの成果として、チャンネル結合系4He:(3H+p)+(3He+n)の位相差をスペクトル表示できることを示し、その結果を論文にまとめ公表することができた。学会発表や国際会議などへの参加をコロナ禍のために中止せざるを得ず、予定していた予算の執行を次年度に繰り越すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の第2の目標である部分幅の計算法の確立について大きな前進が得られ、多体散乱のT行列の計算にも適用できると期待される。今後の予定として、新しい計算法によるT行列計算を、単一チャンネル系、チャンネル結合系、多体系に順次適用し、その有効性を示す計画である。 そのために、次年度の計画として、 1) 漸近波動関数を複素座標スケーリング法における固有関数で記述し、相互作用行列要素が良い近似で得れるることを確認する。 2)単一チャンネル系のT行列を計算し、従来の方法との比較検討を行う。 3)チャンネル結合系への適用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大が収束しないため、学会発表や国際会議参加の計画が中止になり予定していた旅費の執行・使用が出来なくことが理由である。 そのため、今後感染収束が見られれば、学会参加、国際会議参加などを積極的に行う予定であり、それに伴う出張費の使用が必要となる。一方、感染収束を見通すことが出来ない場合、リモート会議システムなどを充実することを計画している。
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