研究実績の概要 |
既に観測実績のある米国のaLIGOの2台、欧州のVirgoに加えて、我が国のKAGRA重力波望遠鏡が2020年度に国際共同観測に初参加した。これらの4台の重力波検出器を用いた新しい重力理論の検証方法を検討した。本研究は、重力波の偏波の直接測定を目指す点に特長がある。想定した天体現象は、中性子星連星のように電磁波対応天体を伴う重力波源である。従来は、4台の検出器からのデータの組み合わせでは、余剰偏波を分離して検証することは不可能だと思われていた。しかし、今年度の研究で、その重力波源が天球のある領域に位置する場合、ある種の修正重力理論が予言するようなスピン0(スカラー)偏波が仮に存在すれば、4台の検出器データのある組み合わせでは、そのスピン0成分だけを抽出可能なことを明らかにした。その具体的な条件式を厳密に導くことに成功した(Hagihara, Era, Iikawa, Asada, PRD Rapid Communication, 2020)。この成果は次の重力波の国際観測で活かされることが期待できる。また、強重力の性質を理解するため、「ガウス・ボネ定理」を用いた光の曲がりの研究も行った。ブラックホールシャドーのような天文観測では、光源や観測者がレンズ天体から有限距離に位置する。無限遠方という極限操作(理想化)を用いることなく、こうした有限距離の状況を厳密に定式化した。具体的には、有限距離の状況での厳密な重力レンズ方程式を導出した。さらに、その逐次解法を見出した。具体例として、ワイル共系重力理論における球対称解における重力レンズ方程式の逐次解を求め、銀河団スケールでの観測可能性を論じた(Takizawa, Ono, Asada, PRD, 2020a,2020b)。
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