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2022 年度 実施状況報告書

重力波の余剰な偏波の検証法の定式化と重力理論模型への制限

研究課題

研究課題/領域番号 20K03963
研究機関弘前大学

研究代表者

浅田 秀樹  弘前大学, 理工学研究科, 教授 (50301023)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード重力理論 / 重力波 / 宇宙物理
研究実績の概要

自転する中性子星であるパルサーは微小な歪みをもっていると考えられている。その歪みの測定は、中性子星のような高密度天体の内部構造を決定する状態方程式を直接的に制限することが知られている。パルサーから放出される周期的な重力波にそうした情報が含まれているはずだが、これまでのところ、LIGO-Virgo-KAGRAおよびGEO600の重力波干渉系でそのシグナルは検出されていない。この直接検出は重要な課題のひとつである。しかし、合体波形に比べて、パルサー重力波の振幅はずっと小さいことが予想され、年スケールの膨大なデータのスタックおよび相関をとる作業が必要である。このため、現状の計算機資源では、広いパラメタ空間での探索が困難であった。
今年度、電波観測等によってパルス周期が既知であるパルサーから放出される周期的重力波の探査法を検討した。従来の方法の多くは、フーリエ空間での定式化に基づくため、観測時間全体のデータを観測終了時まで保持し、解析時点にその全データを使用する必要があった。
本研究における最大の新規性は、「実時間」での波形再現法を見出した点である。原理的に、この実時間における再現法では、各時刻のデータをその都度用いるだけで済み、観測終了まで全データの保存および読み出し・計算を行う必要がないという、従来型のフーリエ法にはない特長がある。見出した定式化を用いた解析方法も簡潔に議論した。
さらに、一般相対性理論を超える修正重力理論のうち、リーマン幾何学に基づく重力理論は最大6偏波(テンソル2個、ベクトル2個、スカラー2個)を許す。地球の自転によるレーザー干渉系のアンテナパターンの周期変化を用いることで、この最大6偏波が分離可能となることも示した。特に、従来型の振幅の再現ではなく、「波形」そのものの再現さえ可能な点が画期的である(Kuwahara and Asada, PRD, 2022)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一般相対性理論を超える修正重力理論を重力波観測を用いて検証するための新たな定式化および方法をひとつ提案することができたから。

今後の研究の推進方策

周期的な重力波に対する新たな定式化および方法を提案できたが、パルス周期の変動の効果を取り込みことが次の課題である。この変動を考慮した定式化の改良およびデータ解析方法の革新を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初参加予定していた国際会議および国内学会の一部がオンラインもしくはハイブリッド開催に変更となり、旅費の執行額が見込みより少なくなったことが主な理由である。次年度開催予定の国際会議および学会における成果発表および研究打ち合わせ等のための出張旅費・参加費として使用する計画である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Earth rotation and time-domain reconstruction of polarization states for continuous gravitational waves from a known pulsar2022

    • 著者名/発表者名
      Naoto Kuwahara, Hideki Asada
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 106 ページ: 024051-1,8

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.106.024051 Focus to learn more

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nondivergent deflection of light around a photon sphere of a compact object2022

    • 著者名/発表者名
      Ryuya Kudo, Hideki Asada
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 105 ページ: 084014-1,6

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.105.084014

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gravitational lens on de-Sitter background2022

    • 著者名/発表者名
      Keita Takizawa, Hideki Asada
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 105 ページ: 084022-1,10

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.105.084022

    • 査読あり
  • [学会発表] 光学的定曲率空間を背景とするMannheim-Kazanas解における光の曲がり2023

    • 著者名/発表者名
      瀧澤奎太、浅田秀樹
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Photon cylinderの定義と諸性質2023

    • 著者名/発表者名
      工藤龍也,浅田秀樹
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] 光学的定曲率空間を背景とする重力レンズ2022

    • 著者名/発表者名
      瀧澤 奎太、浅田 秀樹
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] 静的円筒対称時空の強重力領域における光の振る舞い2022

    • 著者名/発表者名
      工藤龍也,浅田秀樹
    • 学会等名
      日本物理学会

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公開日: 2023-12-25  

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