研究実績の概要 |
中性子過剰不安定核領域に特有な原子核の対相関の性質を、安定核と比較しつつ明らかにすることが本研究課題の目的である。荷電半径の同位体依存性は対相関の性質を反映することがこれまでの研究で指摘されている。荷電半径を精密に計算するため、原子核の電荷密度分布を相対論的定式化に基づいて計算する手法を用いた。この電荷密度分布では核内の陽子密度分布からの寄与に加えて、中性子密度分布からの寄与、スピンー軌道密度からの寄与および相対論的な効果が入っている。これを軸対称変形核の計算が可能な調和振動子基底による原子核密度汎関数理論の計算コードHFBTHOに実装した。この実装により変形核も含めた核図表の広範囲にわたる偶々核での精密な電荷密度分布の計算が可能となった。
荷電半径の同位体依存性を再現することが知られているFayans密度汎関数の性質を詳細に分析するため、Fayans密度汎関数をHFBTHOに実装し、二重魔法核で座標基底の計算コードとのベンチマーク計算を行った。Fayansの対密度汎関数を用いてCa, Ni, Sn, Pb同位体等の荷電半径を計算し、閉殻付近での荷電半径の同位体依存性に見られるキンクを再現した。
励起状態での対相関の影響を調べるために、有限振幅法に対外場を用いてSn原子核での対振動状態への遷移を系統的に計算した。標準的な密度依存性を持つ対密度汎関数の他、空間微分項を含む対密度汎関数を用いて低励起状態への対遷移を分析したが、対密度汎関数依存性よりもそれ以外の汎関数の粒子ー空孔部分の依存性のほうが大きいことがわかった。
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