中性子過剰不安定核に特有な原子核の対相関の性質を明らかにすることが本研究課題の目的である。2023年度は以下の3つの点について進展があった。 αノックアウト反応におけるα粒子除去の強度の評価を平均場理論を用いて行っている。α粒子を構成する4つの核子は局所的に同じ位置に分布していると仮定した計算では、対相関がα粒子除去の強度に重要な役割を示していたが、α粒子の有限サイズ効果を取り入れる定式化を行った。密度行列展開を行うことによってα粒子を構成する4つの核子がガウス型の波動関数で分布している場合でも平均場理論に基づいた計算が可能となった。この定式化ではα粒子の重心の自由度を分離することが可能であるため、ノックアウトの反応理論計算に用いることができるα粒子除去の振幅の計算が可能となる。 2核子がスピン1に組んだスピン三重項対相関に関する分析も進めている。強いスピン軌道汎関数の影響によって標準的な、スピン0に組んだスピン一重項の対密度汎関数の場合でもスピン三重項の対凝縮が誘発されることを明らかにしたとともに、スピン三重項の対密度汎関数はスピン軌道スプリッティングとスピン一重項の対凝縮を誘発することを示した。 40-48Ca同位体の荷電半径の中性子数依存性は放物線的な振る舞いをするが、この実験データの傾向を説明できる理論であるFayans密度汎関数の分析を行った。荷電半径の放物線的な増加はFayansの対密度汎関数に含まれる密度の微分項由来である、中性子の対相関ポテンシャルの振る舞いによってよく再現できるが、同じ振る舞いによって40Caよりも軽い領域の荷電半径の実験データの説明に失敗しており、両方の質量数領域を統一的に記述できることが重要であることを指摘した。
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