研究課題/領域番号 |
20K03973
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中里 健一郎 九州大学, 基幹教育院, 助教 (80609347)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 超新星ニュートリノ / 原始中性子星冷却 / 核物質状態方程式 / 重力崩壊型超新星爆発 / ブラックホール |
研究実績の概要 |
太陽の約10倍以上の質量を持つ恒星はその進化の最後に重力崩壊を起こし、中心部で原子核密度を超えると、核力の斥力芯によってバウンスし衝撃波を生じると同時に大量のニュートリノ(超新星ニュートリノ)を放出する。その結果として超新星爆発が起こると中性子星が形成されると考えられている。本研究課題では、これまであまり研究されてこなかった、数十秒にわたる長いスケールの時間変動に着目して、超新星ニュートリノのスペクトルを数値シミュレーションに基づき予測する。さらに、超新星中心部に存在する高密度核物質の性質(状態方程式)が放出されるニュートリノにどのような影響を与えるのかを明らかにする。 本年度は、これまで広く使われてきた核物質状態方程式モデルに加えて、新たに現実的な核力に基づいて構築されたモデルも加えて、状態方程式がニュートリノ放出に与える影響を数値シミュレーションによって調べた。その際、重力崩壊の開始から衝撃波の伝播が起こる段階(early phase)とそれに続く原始中性子星の冷却段階(late phase)を異なる手法を用いて計算した。結果として、early phase においては核物質状態方程式による影響があまり顕著ではないが、late phase では核密度を超える領域と核密度以下の領域の双方における核物質の性質がニュートリノ放出の時間変動に大きく影響することが確認できた。ただし、ブラックホールが形成されるような重い星の重力崩壊の場合は、原始中性子星の最大質量に関係して、核物質状態方程式によって放出されるニュートリノの総量や継続時間に違いがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の想定では、early phase における核物質状態方程式の依存性に関する論文を本年度中に出版する計画であったが、論文誌への投稿が遅れた。これには、もともと予定していなかったブラックホール形成の場合の解析も論文に加えたことのほか、新型コロナウイルス感染症による対応のため研究の時間や議論の機会が思うように確保できなかったことも要因として挙げられる。ただし、当該論文はすでに査読付き欧文論文誌に受理されて出版の準備が進められており、全体としても今後の研究計画の変更を必要とするほどの遅れではないことから、「やや遅れている」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、late phase において核物質状態方程式がニュートリノ放出に与える影響を明らかにする。また Super-Kamiokande を念頭に、実際に銀河系内で超新星爆発が起こった場合に期待されるニュートリノ event rate の時間変化を評価し、観測から原始中性子星の質量のみならず状態方程式に関する情報も引き出すことができるかを検討する。特に late phase ではニュートリノ光度が下がるため、統計的に有意な結論を得るためのデータ解析の手法についても探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた学会・研究会への参加や共同研究打ち合わせのための出張がすべてキャンセルとなったため、旅費の支出が無かった。また、予定していた論文の投稿が遅れたため本年度内の出版費用の支出が無かった。以上の理由により次年度使用額が生じた。繰越額については当該論文の出版費用に充てるほか、今後も新型コロナウイルス感染症による影響が長引くことを見越して、ウェブ会議用の器材類や有償のクラウドサービスなどリモートワーク用のツールの費用に充てることも検討している。
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