研究課題
原子核の構成粒子である陽子や中性子の仲間であるバリオンと核力を伝達する中間子は総称してハドロンと呼ばれるが、クォークとその反粒子である反クォークでできている。バリオンはクォーク3つで構成され、中間子はクォークと反クォークで構成される。クォークや反クォークは基本的な粒子であるが、単独で取り出す事はできないと考えられている。これをクォークの閉じ込めといい、素粒子・原子核物理学におけるいまだ未解決の大問題である。クォークや反クォークの間には強い力と呼ばれるミクロな力が働き、この力を記述するのが量子色力学(QCD)という理論である。QCDをコンピュータ上に載せた格子QCD計算によって、高温ではハドロンが溶けてクォークや反クォーク、さらに強い力を伝達するグルーオンが溶けだす事が指摘され、高エネルギーの原子核衝突実験でもそれを示唆する結果が得られている。しかし、高温におけるハドロン相からクォーク相への転移は明確な相転移でなく、連続的なクロスオーバー転移であり、何をもって両相を区別するかが重要な問題になっている。報告者はこの問題について、近年新しく発達したトポロジカル・データ解析の有力な手法であるパーシステントホモロジーの方法を用いて両相を解析した。これはデータ空間におけるトポロジーをそこに存在する”穴”の数やその安定性で調べる方法である。研究期間の初期は主に格子QCDやその有効(現象論)模型によるシミュレーションデータの作成が主であったが、最終年はそれらのパーシステントホモロジー解析をまとめ、「(1)ハドロン相とクォーク相ではパーシステントホモロジー解析によって得られるパーシステント図が大きく異なる」「(2)特に大きな穴の構造が転移の性質を強く反映する」事などがわかった。これらの結果を学会発表や査読付き学術論文や共同利用研究施設のハイライト論文にまとめる事ができた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Symmetry
巻: 14 ページ: 1783~1783
10.3390/sym14091783
Annual report 2021 (2021 Highlights), RCNP, Osaka University
巻: 2021 ページ: 1~9