エネルギー汎関数を用いた変分法において、2体核力における相対論的Boost効果を考慮する研究を遂行した。2体核力ポテンシャルは2核子の重心系で作成されている一方で、核物質中の2核子は有限の重心運動量を持つ。よってそのような2核子間の核力ポテンシャルは、重心系でのそれから相対論的Boost効果による変更を受ける。本研究では非相対論的な枠組みで核物質のエネルギー計算を行っており、この相対論的Boost効果として、最低次の(v/c)^2の補正を考慮した。具体的には相対論的な分散関係に起因する補正と、Lorentz収縮に起因する補正が生じる。 当該年度の研究では、中性子物質と対称核物質のそれぞれに対して、中心力型核力ポテンシャルであるAV4'ポテンシャルを用いた場合に、上記の相対論的Boost補正を施し、その影響を調べた。実際には相対論的Boost補正は2核子の重心運動量演算子の2次で記述されることとなり、それは従来のエネルギー汎関数では取り扱うことができない。そこで本研究では、系の波動関数をJastrow型に仮定した場合のエネルギー期待値の2体クラスター項を正しく取り入れるように、2核子重心運動量依存項を含む核力ポテンシャルに対するエネルギー汎関数を構築した。 数値計算の結果、相対論的Boost補正により、中性子物質と対称核物質の共にエネルギーは上昇する傾向が得られ、これはAPRのEOSでの傾向と一致する。その理由は主にLorentz収縮によるもので、核力の斥力芯及び引力ポケットの両方ともLorentz収縮により範囲が狭まるが、引力ポケット部分では動径分布関数の振幅が大きいことから、引力領域の収縮の影響がより顕著となり、エネルギーの上昇が起こっていることが判明した。
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