研究課題/領域番号 |
20K03979
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鷹野 正利 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00257198)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 核物質状態方程式 / 中性子星 |
研究実績の概要 |
エネルギー汎関数を用いた変分法において、対称核物質に対し、2体核力のスピン軌道力を考慮する拡張に着手した。先行研究において、中性子物質に対し同様の拡張を行なったが、本研究ではそれを対称核物質へと適用する。 まず、対称核物質に対して2体中心力とテンソル力までを考慮したエネルギー汎関数から出発し、スピン軌道力を考慮する拡張を行う。そのためにまず、スピン軌道力型分布関数を新たに定義する。これを用いると、スピン軌道力ポテンシャルエネルギーの期待値は厳密に、エネルギー汎関数に取り入れることができる。次に粒子間相関から生じる運動エネルギーを評価するために、波動関数をJastrow型に仮定する。するとHamiltonian期待値とエネルギー汎関数の両者をクラスター展開することができる。そして、前者の2体クラスター項が後者に過不足なく含まれるように、また前者の3体クラスター項の主要部分も適切に含まれるように、エネルギー汎関数を構築する。そしてそのエネルギー汎関数を、各種分布関数について変分をとってEuler-Lagrange方程式を導き、それを解くことで十分に最小化されたエネルギー値を求める。 前述の中性子物質に対する先行研究では、モンテカルロ計算結果との比較から、取り入れるべき3体クラスター項を慎重に選別した。しかし本研究では対称核物質への拡張の第1段階として、明らかに取り入れるべき3体クラスター項のみを考慮した段階でのエネルギー汎関数を作成し、テスト数値計算を実行した。すると2体核力としてAV8’ポテンシャルを用いた場合、他の多体計算によるエネルギー値に比べ、相当低いエネルギー値が得られた。この結果は対称核物質の場合でも、中性子物質の場合と同程度に注意深く、取り入れるべき3体クラスター項を選別する必要があることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば対称核物質に対するエネルギー汎関数の構築について、スピン軌道力を考慮する理論の拡張を完成させる予定であったが、当該年度で完成には至らなかった。そのため、研究全体としてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
対称核物質に対するスピン軌道力を考慮したエネルギー汎関数の完成を最優先に進めるが、それと同時に有限温度核物質への理論の拡張の方法を検討し、より効率的に状態方程式を完成する可能性も模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度当初は、新型コロナウイルス感染状況の改善が見られないため、申請時に旅費等に計上していた予算を物品購入に利用することとし、予算の前倒し請求を行った。しかし年度の終わり頃になり、新型コロナウイルスの感染状況に改善の兆候が見られ、2022年度以降に旅費等が必要となる可能性が生じたため、一部を2022年度に繰り越すこととした。繰り越した予算は、2022年度請求分と合わせて、旅費や消耗品等に使用する予定である。
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