研究課題/領域番号 |
20K03980
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
太田 信義 近畿大学, 理工学部, 教授 (90167304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子重力理論 / くりこみ群 / 漸近安全性 / 宇宙項問題 |
研究実績の概要 |
今年度は、目標としている重力の量子論とその応用、検証に関して以下のような成果を得た。 重力の量子論を定式化するのにくりこみ群を使う方法で、重力が非摂動的にくりこみ可能であることを検証するためには、理論をどの範囲までにかぎるべきかをきちんと調べておくことは重要な課題の一つである。これに関して、一般の背景場の下で2次までの高次曲率項をいれて調べた結果、それが3つの演算子に限られるという結果を得た。これは今まで誰も調べておらず重要な結果と考えている。 また、高階微分を含む重力理論で、高階微分を含むゲージ固定を行って量子化する場合、理論がユニタリーであることを保証するためには第3のゴーストと呼ばれるものが必要であることが指摘されてきた。それは複雑な計算の結果調べられていたが、私はBRST対称性に基づく一般的な手法によりそれが非常に容易に決定できることを示した。 これらの話題に関する国際研究集会Exact Renormalization Group 2020 (ERG2020)を11月2-6日、京都大学において、主にZoomによって開催した。私はその組織委員長として会議の運営に当たった。 以上の成果について、以下の発表を行った。10月12-16日、デンマークのUniversity of Southern Denmark、CP^3 Origin主催の国際研究集会Quantum spacetime and the Renormalization Groupにて(Zoomによる開催になった)招待講演を行った。3月12-15日、Zoomによる日本物理学会にて、学生の山口大輝君が発表を行った。また、3月22-25日には、大阪市立大学にてZoomと現地参加の混合で行われた国際研究集会Randomness, Integrability and Representation Theory in Quantum Field Theory 2021にて招待講演を行った。 残念なことに、コロナのため会議に参加したり、共同研究者と直接議論できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、重力の量子論の定式化における様々な問題点の整理をし、それらを解決する方策を探るとともに、非摂動的にくりこみ可能な理論を制限することを目標としていた。これらの目標はほぼ達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
漸近的安全性により重力の量子論を構築していく上で、曲率の2次以上の項を加えた理論を検討することが必要であるが、ユニタリー性が破れるという問題がある。本計画ではこの問題へのアプローチとして計量と曲率が独立になっている理論を解析したい。そのためには、イタリアにいる共同研究者と直接議論する機会が必須だと考えている。是非訪問して、共同研究を始動したいと考えている。また、今までの成果で曲率の2次までを考えたとき、高エネルギー領域と低エネルギー領域がスムーズにつながる状況が実現できていないので、これについても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナのため予定していた国際研究集会への参加や、共同研究のための海外渡航が全く出来なかったため、次年度使用額が生じました。次年度には是非、共同研究を実現したいと考えます。
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