研究課題/領域番号 |
20K03980
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
太田 信義 近畿大学, 理工学総合研究所, 研究員 (90167304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 量子重力理論 / くりこみ群 / 漸近的安全性 |
研究実績の概要 |
漸近的安全性による量子重力理論の定式化の物理的応用として昨年度、電荷を持つReissner-Nordstromブラックホールにこの手法を適用して、その中心にある特異点が解消される可能性を指摘した。今年度はこれを回転するカーブラックホールで考えると、非自明な無矛盾性条件が必要であることが分かり、その解として、ブラックホールのエントロピーが、ホライズン面積の関数として決まることを発見した。それにより、量子論的なエントロピーの一般的な表式を世界で初めて与えることが出来た。さらにこの結果をシュワルツシルトブラックホールに使って、ブラックホールの温度や質量についての相構造を解析して、ブラックホール残留物が生じる可能性を指摘した。これはダークマターを説明する可能性がある。また、2次重力理論の1ループの発散の計算を詳しく説明し、それを使ったベータ関数の計算、および、より一般のf(R,R_{μν}^2)重力の発散の計算についても今までの私の研究も含めてレビューした。さらに、これまで漸近的安全性のアプローチで見逃されていた波動関数くりこみの効果を取り入れる必要があることを指摘し、それを考慮すると2次曲率の相互作用を含めた理論で、高エネルギーでニュートン定数が有限の値にとどまり、低エネルギーでは小さくなるということを示した一方で、曲率2次項の係数には漸近自由に対応する固定点があって、曲率2次項には独立な演算子が2つあるが、そのの両方が必要であることを示した。現在、これに関する論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の最初の頃まで、コロナの影響で共同研究者を訪問することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
漸近的安全性により重力の量子論を構築していく上で残されている重要な問題のうち、非摂動的にくりこみ可能な理論をどの範囲にまで限ったら良いかという問題に目処がついてきた。今後は、くりこみ群を用いて、この理論が低エネルギー現象にどのような影響を持つのかを、くりこみ群方程式を低エネルギーまで積分することにより調べたり、またブラックホールや宇宙初期の特異点に対する効果など、物理的な結果を得て、実験、観測的な予言を行い、この理論を検証することを目指す。今年度は国際研究会に参加したり、共同研究者を訪問することを活発に行い、研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、今年度の最初の頃まで関連する国際会議に参加したり、共同研究者を訪問することが出来なかった。次年度はコロナによる障害がかなり緩和されてきているので、国際研究会に参加したり、共同研究者を訪問することを積極的に行い、研究を推進する予定である。また強力なパソコンを購入して、数値計算も援用して研究を進めたい。
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