研究実績の概要 |
最終年度は前年度に引き続き、すでに10年以上稼働中のVERITASのアーカイブデータをMonte Carlo (MC)シミュレーションの結果と比較することでハドロン相互作用モデルの検証を行った。VERITAS内部メンバーからのフィードバックを受け、データ選定の基準を変更、解析に使用するデータ量を増やし、外的要因(大気モデル不定性)・観測装置パラメータの時期変動(鏡の反射率・PMTゲイン・欠落ピクセルの変化)・入力宇宙線の情報(各元素のスペクトルを最新のCALET/DAMPE等の測定結果にアップデート)由来の系統誤差が最終結果に与える影響の見積もり等を行った。長期間に渡るデータを扱う上でVERITASの性能パラメータ自体が変化することや、大量のシミュレーションを効率的に行うための計画の再策定、VERITAS側の標準ソフトウェアのアップデートに伴う解析の変更など想定より作業が増えたこともあり、一定の結果は出ているがまだ多くの独立検証が必要な段階にある。できるだけ早くcollaboration reviewを通過させられる質まで高めて対外的な発表を行えるよう、効率的な作業プランを再度練り直し、VERITAS解析のexpertともより頻繁に方針を話し合って研究進捗のスピード向上を試みているところである。 研究全体の成果としては、CTA(Cherenkov Telescope Array)のProd3-v1, Omega configurationに対するガンマ線感度推定値がpost-LHC世代のハドロン相互作用モデル間で 1 -20 TeV領域で約30%, 背景雑音頻度で 2倍程度の差異を生み出すことを定量的に評価し、CTAがハドロン相互作用モデルの検証に優れた性能を持ち得ることを示した論文をドイツ・スペイン・フランス・ブラジルのCTAメンバーと共著で査読誌にて出版済みである。
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