研究課題/領域番号 |
20K03995
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松田 洋平 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (50569043)
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研究分担者 |
池田 隼人 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 助教 (30649083)
坂口 治隆 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (30025465)
銭廣 十三 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70529057)
伊藤 正俊 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (30400435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放射性同位体 / 偏極陽子弾性散乱 / 炭素14 |
研究実績の概要 |
核物質の状態方程式を決定する事は、核子多体系や天体現象の研究に於いて重要な課題となっている。対称核物質に於いては、飽和密度付近から高密度側にかけての三体力の効果、中性子核物質に於いては、対称エネルギーの密度依存性の解明が必要である。本研究では、炭素14偏極陽子弾性散乱を精度良く測定し、この問題を解決する。通常、地上に安定に存在しない不安定原子核の場合、実験的困難から必要な精度での測定は難しいが、高濃度の炭素14を標的として用い安定原子核と同じ順運動学下で測定を行う事で実現可能である。 先行研究(15K17660)では、炭素14を含んだ炭素粉末を購入し、炭素14標的を作って偏極陽子弾性散乱測定を行った。この過程で、不安定原子核を標的とした順運動学での偏極陽子弾性散乱測定の手法を確立させた。また購入した粉末には想定よりも多くの安定同位体が混ざっていることが測定データから判明し、本研究の目的を達成するには別の方法で、より高濃度の炭素14粉末を入手または精製する必要があることが分かった。 本研究では高濃度炭素14粉末を自前で精製し、それを用いて厚さ10 mg/cm2、直径12 mmで同位体比 80-95%の炭素14標的を作成する。初年度は、粉末を精製するための装置を作り上げた。設計段階では、安全に高濃度炭素14粉末を精製出来るかどうかについて担当の分担者と検討を重ねると共に有限要素法を用いた伝熱、構造解析による評価も行った。計画時に予定していた安定同位体を用いてのコールドランは次年度に行うことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高濃度炭素14粉末を自前で精製するためには、安全に精製するための装置を開発することが重要である。そのため初年度は、装置の設計段階で、核化学の専門家との議論、有限要素法を用いた伝熱、構造解析を重点的に行った。その後、完成した設計図をもとに装置の組み立てを行った。 計画時に予定していた安定同位体を用いてのコールドランは、(1)新型コロナウイルス感染対策、(2)所属している東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターでのRI棟改修工事および貯留槽更新地上化工事により使用できる設備に制限があること、(3)2021年に地震が発生していることから、次年度に行うことにした。この点については次年度の実施でも全体のスケジュールに大きな影響を及ぼさないため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず炭素の安定同位体を用いてコールドランを行う。この年度から所属が東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターから甲南大学に移るため、コールドランは主に甲南大学内で行う。その後、ホットランを行い高濃度炭素14粉末の精製を試みる。ホットランが可能な場所は学内にはなく、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターまたは大阪大学核物理研究センターで行う必要がある。コールドランと並行して両施設の担当者と相談しながら作業場所の準備を進めておく。高濃度炭素14粉末精製後は、速やかに標的作成に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
学外分担者の旅費として計上していた分が、新型コロナウイルス感染症の影響で全額執行出来なかった。出張可能な時期に消化される予定である。
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