研究課題
宇宙から地球に飛来する陽子や原子核の荷電粒子である超高エネルギー宇宙線が、宇宙のどこでどのように加速されているのかは謎である。これに迫るため、建設が進行中のCherenkov Telescope Array(CTA)計画の大口径望遠鏡4台のステレオ観測によって、宇宙線の起源に迫るマルチメッセンジャー宇宙物理学を展開していきたい。そのために、本研究では、チェレンコフ光の観測には必ずしも適さない条件下で突発的に起こる、超高エネルギー宇宙線源候補天体の活動性を、数十GeVからTeVエネルギー帯のガンマ線観測で高頻度に捉えるための準備研究を行っている。本年度は、今後建設が予定されている大口径望遠鏡2-4号基の光学系である球面分割鏡と焦点面検出器(カメラ)のライトガイドの性能を、実測に基づき評価を行うことができた。これらの結果を空気シャワーのモンテカルロシミュレーションに組み込むことで、より現実に即したデータ解析条件の最適化を行うことが可能になると期待できる。球面分割鏡については、製造された分割球面鏡の一枚一枚の実測に基づいた曲率半径と焦点面でのスポットサイズを用いて、2-4号機に使う分割鏡を、放物面に近い曲率半径の分布に配置することが可能であることを示し、レイトレース法により焦点面でのスポットサイズが要求仕様を満たす結像性能であることを示した。また、実測に基づいた分割球面鏡の反射率のデータに基づき、平均的な反射率の波長依存性も評価できた。焦点面検出器のライトガイドについては、量産品のロットごとにサンプリングしたものを、紫外線から可視光までの9波長において、回転測定により角度依存性を測定することによって、集光効率の波長依存性の評価を行った。精度向上のために、初号機のときに行った測定方法を見直した。その結果、2-4号基用の集光効率が初号機用より高いことを示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度行った大口径望遠鏡2-4号基の光学系である球面分割鏡と焦点面検出器のライトガイドの性能評価については、最終的な詰めを行う研究を引き続き行うことが必要な部分もあるため、おおむね順調に進展しているという状況と判断した。
今後は、まずは本年度行った大口径望遠鏡2-4号基の光学系である球面分割鏡と焦点面検出器のライトガイドの性能評価を最終段階まで詰めて行く。ライトガイドの反射薄膜の大角度入射の反射率の波長依存性の測定も行い、その結果をレイトレース法によるライトガイドの集光効率のシミュレーションに組み込むことで、ライトガイドの集光効率の波長依存性の実測との比較を行いたい。これらの実測に基づいたチェレンコフ光の集光効率の波長依存性の結果を空気シャワーのモンテカルロシミュレーションに組み込むことで、より現実に即したステレオ観測時のトリガー条件とデータ解析条件の最適化を目指して行く。大口径望遠鏡は、宇宙線とガンマ線が大気に突入して生ずる空気シャワーに伴うチェレンコフ光の像の形を、望遠鏡の焦点面に配置された1855本の光電子増倍管からなる焦点面検出器(カメラ)で観測し、宇宙線からガンマ線を識別している。しかし、実際には夜光が混入してくるため、この夜光を取り除き、宇宙線とガンマ線のチェレンコフ光の像を取り出すというイメージクリーニングという処理をまず行う必要がある。チェレンコフ光の観測には必ずしも適さない条件下で、このクリーニング条件の最適化を行う予定である。
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Proc. SPIE 11451, Advances in Optical and Mechanical Technologies for Telescopes and Instrumentation IV
巻: 11451 ページ: 114510G
10.1117/12.2562111