研究課題/領域番号 |
20K03996
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
吉田 龍生 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (60241741)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 解像型大気チェレンコフ望遠鏡 / 超高エネルギーガンマ線天体物理学 |
研究実績の概要 |
宇宙から地球に飛来する陽子や原子核の荷電粒子である超高エネルギー宇宙線の起源や加速機構は未だ謎である。この謎に迫るため、Cherenkov Telescope Array(CTA)計画の大口径望遠鏡(LST)4基のステレオ観測によって、超高エネルギー宇宙線源候補天体の活動性を、20 GeVから1 TeV程度までのエネルギー帯のガンマ線観測で高頻度に捉えるための準備研究を行っている。LST1号基は2018年10月に、CTA北サイトのカナリー諸島のラ・パルマ島に完成し観測を開始しているが、昨年2021年9月下旬から12月中旬までラ・パルマ島の火山クンブレ・ビエハの噴火が継続し、観測が中断された。2022年春から観測が再開され、幸いにもLST1の性能には影響はないことが確認されている。残り3基の建設が2022年度から開始される予定である。 2021年度は、2020年度に引き続き、主に焦点面検出器のライトガイドの性能評価を行った。紫外線310 nmから可視光650 nmまでの9波長のLEDを光源として、LST1号基用とLST2-4号基用のライトガイドを光電子増倍管(PMT)に取り付けて、暗室で回転測定を行い、各波長での集光効率の角度依存性を測定した。今回、LED光の強度の時間変化を補正するために、ライトガイドを取り付けたPMTと光源のモニター用のPMTでデータの両方を用いて、集光効率を求めた。モニター用のPMTの測定値の時間変化を簡単な線形関数でモデル化して補正を行ったところ、LED光の時間依存性を補正できることを見いだした。その結果、昨年度得ていたLST2-4量産品の性能がLST1用より高い性能であることがほぼ確立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度から2021年度にかけて行ったLSTの光学系である球面分割鏡と焦点面検出器のライトガイドの性能評価によって、集光系の重要な基本パラメータを詰めることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。一方で、今回ほぼ確立したライトガイドのLST1用量産品とLST2-4量産品との性能について、さらに詰めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
超高エネルギー宇宙線源候補天体のフレア時など、チェレンコフ光の観測には必ずしも適さない条件下で突発的に起こる天体現象のガンマ線信号を高頻度で検出するためには、空気シャワーのモンテカルロシミュレーションを行い、解析条件を最適化することが必要になる。そのため、引き続き、モンテカルロシミュレーションに必要なパラメータとして、ライトガイドの実効的な集光効率を求めるための測定を行う予定である。ライトガイドの入口は正6角形であるため、入射光の方位角依存性の測定も行い、実効的な集光効率を求める。 今までの実測に基づいたチェレンコフ光の集光効率の波長依存性の結果を空気シャワーのモンテカルロシミュレーションに組み込むことで、より現実に即したステレオ観測時のトリガー条件とデータ解析条件の最適化を目指して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年2021年秋から3ヶ月間、ラ・パルマ島の火山クンブレ・ビエハの噴火が継続し、観測が中断されたため、望遠鏡の性能などに影響が出る可能性があった。そのために調査研究で必要になる可能性のある物品費や旅費などを次年度に繰り越した。幸い性能には大きな影響ないことが確認され観測が再開されたので、今年度はデータなど蓄積しておくストレージサーバーなどの物品費などに使用する予定である。
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