研究課題/領域番号 |
20K03998
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 博士 東京理科大学, 理工学部物理学科, 助教 (60814720)
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研究分担者 |
中野 佑樹 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (70781889)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 太陽ニュートリノ / 水チェレンコフ検出器 / 新物理探索 / 反電子ニュートリノ / 中性子タグ / ガドリニウム |
研究実績の概要 |
今年度、スーパーカミオカンデ(SK)2008~2018年の観測データを用いた太陽反電子ニュートリノ探索における解析手法を改善し、ローレンツ不変性を破る新物理の感度に相当する電子ニュートリノが反電子ニュートリノへの遷移確率に制限を与えた。水チェレンコフ検出手法による探索では厳しい制限であり、液体シンチレータ検出手法と比べて矛盾しない。SKに硫酸ガドリニウム(Gd濃度で0.011%)を導入してから約1年間の水の透明度や微量に混入する放射性不純物濃度の測定を継続して実施し、安定した検出器の運転を実現した。 一方で、反電子ニュートリノ検出感度の改善および背景雑音事象数の見積り不定性低減のために、以下の項目を実施した。 (a)中性子タグ効率に関するAmBe線源のガンマ線および中性子放出量の直接測定:HPGe検出器、NaI(Tl)検出器と液体シンチレータ検出器、3He検出器を駆使してAmBe線源からガンマ線と中性子の頻度および放出比、中性子エネルギースペクトラムを測定した。 (b)BGO結晶の中性子応答の研究:3MeVと14.8MeVの単色エネルギーの中性子をBGO結晶に照射する実験を実施した。BGO結晶中における原子核のクエンチング係数(本来の反跳エネルギーより低く発光し、見かけのエネルギーが低くなる効果)を決定し、SKシミュレーションにフィードバックする。 (c)背景雑音事象である宇宙線ミューオンの電荷比と偏極を測定し、とくに神岡地下まで飛来する超高エネルギーのミューオンの性質理解に貢献した。 (d)1996~20118年のSK観測データを用いて、太陽フレアによって生じる反電子ニュートリノを探索した。太陽活動に密接に関わっているため、ローレンツ不変性を破る新物理探索における不定性低減に間接的に寄与する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度、Gdを導入する前のSKデータを用いた解析結果の論文が受理され掲載された。SK-Gdが開始され、評価線源をいれてエネルギースケールや性能の位置一様性、安定性を継続的に調査してきた。 SK-Gdにおける太陽反電子ニュートリノ探索のために、外堀を埋めるような以下の基礎研究を実施した。 (a)産総研で中性子照射実験を実施しBGOのクエンチング係数の測定 (b)AmBe線源の中性子放射頻度を測定 (c)宇宙線ミューオンの電荷比・偏極測定 (d)太陽フレアに関連するニュートリノ探索
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今後の研究の推進方策 |
1. シミュレーションで、SK-Gdの背景雑音事象を推定し、現在のGd濃度0.011%における感度および、濃度増加したときの感度を見積もる。 2. SKに硫酸ガドリニウムを増量して、Gd濃度0.03%(捕獲効率50%から75%への増加に相当)を達成する。 3. SK-Gd (0.011%濃度)の1年間のデータを用いて、背景雑音事象である宇宙線ミューオンによる核破砕同位体事象を観測する。この事象から、効率よく太陽反電子ニュートリノ事象を選択できる条件を決定する。 4. 宇宙線ミューオンの時期変動(季節変動、太陽活動との相関)を評価し、核破砕同位体事象の生成率の評価を実施する。
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