研究課題
本研究は、2022年から欧州原子核研究機構(CERN)で開始したFASER実験において、アクシオン的粒子(ALP: Axion Like Particle)を探索するためにシリコン・ゲルマニウム(SiGe)-BiCMOSモノリシック型ピクセル検出器を用いた前段シャワー検出器の開発を目指している。本科研費で行う研究事項は、「ピクセル検出器に使用する基板類の開発」と「データ収集システム用ソフトウェアの開発」によって前段シャワー検出器を実現させることである。令和4年度の研究実績の概要は以下のとおりである。* ピクセル検出器に使用する基板類の開発:前段シャワー検出器では、6センサーをフレキシブル基板(モジュール基板)に接着してモジュールとし、12モジュールを使用して1レイヤーとする。各モジュールにはピッグテールと呼ばれるフレキシブル基板が接続される。そして、ピッグテールをデータ収集システムや電源に接続するためのインターフェース基板を使用する。本研究では、モジュール基板、ピッグテール、インターフェース基板の開発を行う。令和4年度はモジュール基板とピッグテールのプロトタイプを製造した。そして、プロトタイプ・センサーとこれらの基板を用いてプロトタイプ・モジュールを作成し、性能評価試験を行った。その結果、これらの基板は当初の性能を達成していることが分かり、令和5年度に実機用の基板類を開発することになった。* データ収集システム用ソフトウェアの開発:前段シャワー検出器の開発のために、モジュールやレイヤーを試験するためのデータ収集システムの開発を行う必要がある。本科研費では、システム制御を行うためのソフトウェアを開発する。令和4年度は、プロトタイプ・モジュールを試験するためのソフトウェアを開発し、性能評価試験に使用した。
3: やや遅れている
コロナの影響や世界的な半導体不足、センサーを製造している研究協力機関においてセンサーの製造装置の故障が発生し、前段シャワー検出器の開発は半年ほど遅れが生じている。しかし、これらの問題は既に解消されている。また、本科研費で開発を行うことになっている基板類については、技術的問題は発生していないので、本科研費の目的である前段シャワー検出器の実現は達成できる見込みである。
本研究は令和4年度までを予定していたが、研究の遅れに伴い令和5年度まで延長することにした。令和5年度は、前段シャワー検出器の実機のための基板類の開発を行い、実機用モジュールとレイヤーの製造を開始する。また、データ収集のためのソフトウェアは、プロトタイプ・モジュールの試験のために開発したものを実機用に拡張する。
プロトタイプ・センサーを研究協力機関で製造している過程で、製造装置に不測の故障が生じ、プロトタイプ・モジュールの作成に遅延が生じた。それに伴って、本科研費で開発を行う実機用の基板類の製造も遅れたため、次年度に残額を使用することにした。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Journal of High Energy Physics
巻: 2023 ページ: 1と25
10.1007/JHEP01(2023)145
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 2022 ページ: 1と13
10.1093/ptep/ptac129
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1034 ページ: 166825~166825
10.1016/j.nima.2022.166825
https://faser.kek.jp/