研究課題/領域番号 |
20K04007
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
静間 俊行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 上席研究員(定常) (50282299)
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研究分担者 |
宮本 修治 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 特任教授 (90135757)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核共鳴蛍光散乱 |
研究実績の概要 |
本研究では、核共鳴蛍光散乱を用いて鉛原子核の双極子準位を励起し、放出される散乱ガンマ線の測定により、励起エネルギー5~8MeV領域の共鳴準位への電気双極子(E1)遷移の強度を明らかにし、中性子過剰な原子核の励起エネルギー10MeV以下に現れる中性子スキンとの関連を調べる。核共鳴蛍光散乱実験では、蓄積リングの電子ビームとレーザー光との散乱を利用して、直線偏光をした準単色のレーザーコンプトンガンマ線を生成する。そこで、使用するレーザーコンプトンガンマ線のエネルギー分布を評価するため、モンテカルロコードEGS5を用いたシミュレーション計算を行った。本計算では、レーザー光との衝突位置での電子ビームのサイズ、エミッタンスやエネルギー拡がりを考慮し、ガンマ線ビームのエネルギー幅と鉛コリメータ径との相関を調べた。その結果、エネルギー680MeVの電子ビームと波長1.064μmのレーザー光とのコンプトン散乱では、衝突点から7.15mの位置に、直径5mmの鉛コリメーターを設置することにより、最大エネルギー8.14MeVで、エネルギー半値幅約1.2MeVのレーザーコンプトンガンマ線を生成できることを確認した。また、核共鳴蛍光散乱では、散乱ガンマ線の強度は標的の厚さに比例する。一方、核共鳴によるガンマ線の自己吸収のため、放出される散乱ガンマ線の強度が減少する。そこで、最適な標的の厚さを決定するため、自己吸収を考慮した散乱ガンマ線強度の評価を行った。その結果、鉛原子核の典型的な遷移強度(0.01~10eV程度)に対して、標的の厚さ2~5cmで散乱ガンマ線の強度が飽和するため、最適な標的の厚さは1~2cm程度であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はニュースバル放射光施設での測定実験を行うことができなかったが、令和3年度以降に予定している分子科学研究所極端紫外光研究施設(UVSOR)での測定に必要なレーザーコンプトンガンマ線のエネルギー分布のシミュレーションを行うとともに、共鳴散乱ガンマ線の自己吸収のエネルギー依存性や標的厚依存性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度以降は、分子科学研究所極端紫外光研究施設(UVSOR)において、レーザーコンプトンガンマ線を用いた核共鳴蛍光散乱実験を行う予定である。実験に使用する架台や標的を固定するホルダー、レーザーコンプトンガンマ線の単色化に必要な鉛コリメータを準備するとともに、入射ガンマ線のフラックスやエネルギー分布に関するデータを収集し、入射ガンマ線の強度分布を調べる。また、E1遷移強度の微視的な生成メカニズムを明らかにするため、乱雑位相模型などを用いた理論計算を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ニュースバル放射光施設での実験が中止となり、物品購入や国内出張などに変更があり、次年度使用額が生じた。R3年度以降は、分子科学研究所極端紫外光研究施設で実験を行う予定であり、国内旅費や物品費として使用する。
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