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本研究は，銀河内部において恒星の材料となる星間ガスの質量を空間分解した上で正確に測定し，星生成率，ガス質量，星質量の間の関係を定量化することを目的とし，１）近傍銀河内部の領域ごとの高精度な分子ガス質量の導出，２）近傍銀河内部の領域ごとの原子ガス及び暗黒ガスの質量の導出，３）星質量―星生成率―ガス質量の関係の定量化と大局的な星生成過程の解明の観点から研究を進めた。
延長した最終年度は，１）について国立天文台野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡で取得した一酸化炭素分子のデータとアーカイブから取得した原子ガス，紫外線から遠赤外線に及ぶデータから推定した星間塵の量を比較し，一酸化炭素分子の強度から分子ガス量を算出する変換係数の銀河内空間分布を導出した。この変換係数を利用して分子ガス質量を求めると，星生成効率は銀河内部の構造によって大きく異ならないことが明らかになった。２）については原子ガスが支配的な銀河の外側領域と，分子ガスが支配的な内側領域において，分子ガスの星生成効率には違いが見られないが，原子ガスも含めた星生成効率は銀河の外側領域の方が低くなる傾向を発見した。一方で，星生成が開始されてからの経過時間を推定すると両領域での違いは見られず，ガスから星が生成される過程において，原子ガスから分子ガスへの転換が支配的である可能性を見出した。なお，暗黒ガスについてはデータを得ることできず，研究を進められなかった。３）については多数の近傍銀河のデータから，棒状構造や活動銀河核が銀河の中心部へのガス供給と消費に影響を及ぼし，星生成の活発さ，終焉に向けた推移が進む可能性を見出した。
期間全体として，分子ガスは一酸化炭素分子の最低準位間の遷移の観測が本質的であること，その上で変換係数を銀河ごと，領域ごとに求める必要があること，原子ガスから分子ガスへの転換についての理解を進める必要性を明らかにした。
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