研究課題
本研究は、Ia型超新星の多様性の起源を解明すべく、研究期間中に稼働するX線分光撮像衛星XRISMによる過去最高のX線分光能力を最大限に活かし、爆発前の親星である白色矮星連星の重力ポテンシャルの高精度計測や、爆発直後の高温プラズマ分光による精密ドップラー計測、および、爆発後の残骸のプラズマ診断を行うテーマである。具体的には、課題i) 白色矮星連星のX線分光を通じた sub-Chandrasekhar 質量の重い白色矮星の探査、課題ii) Ia型超新星の爆発直後での即時分光観測による親星の同定(55Fe 輝線を用いたSD/DD分別)と輝線のドップラー計測による非対称性の診断、課題iii) Ia型超新星残骸の高温プラズマの高分解能分光観測によるプラズマ診断を用いた SD/DD分別と撮像観測による非対称性の診断、および、課題 iv) X線分光撮像衛星XRISMの観測性能強化の4課題を実施する研究となっている。課題初年度となった令和二年度は、XRISM衛星の稼働に備え、X線衛星データ解析の環境を整備し、XRISM衛星の Performance Verification 期における白色矮星の観測や超新星の即時観測の提案を行った。これらは課題i)ii)の準備研究となる。申請者が提案した強磁場白色矮星の高温プラズマ診断の課題は、優先度の高い観測として受理された。また重力崩壊型の超新星 SN1987A のプラズマ診断を通じた親星推定や非平衡プラズマ診断の課題も、申請者が提案し、優先度の高い観測として受理されている。また課題iii)のための超新星残骸の提案もXRISM科学観測チームのメンバーと協力し、複数受理されるに至っている。また、打ち上げ前に、XRISM衛星の観測性能を強化すべく、科学運用の準備として、JAXAやNASA の研究者と協力し、地上での衛星データ処理ソフトウェアの開発検証や、公開Webページの設計等を行い、国際会議で発表した。
2: おおむね順調に進展している
課題初年度となった令和二年度は、COVID-19 の影響を受け、研究者との交流が制限されたものの、遠隔開催での会議にシフトすることで、本研究課題は滞りなく進める事ができた。X線分光撮像衛星XRISMの稼働後のX線分光観測に向けた準備作業として、「研究実績の概要」に述べた観測提案を行ったが、我々の提案が評価され、無事に採択に至っている。また、X線分光解析のための環境整備も、予定通りのスペックの計算機が購入でき、問題無く解析環境も構築できている。以上から、「おおむね順調に進展している」と判断した。COVID-19 の影響で海外渡航が出来なくなったため、予定していた旅費は翌年度に繰り越すこととした。なお、予定していた国際会議は遠隔開催となったため、他研究者とのコミュニケーションには問題はなかった。
令和三年度もCOVID-19 の影響は続くが、引き続き、X線分光撮像衛星XRISMの稼働後のX線分光観測に向けた準備作業(課題iv)を進めると共に、現在稼働中のX線衛星を用いて課題iii) を実施する予定である。令和四年度にXRISMが稼働した後は、予定通り、課題i),ii)およびiii)を実施することとする。
COVID-19の影響で旅費(国際X線衛星較正コンソーシアムや研究打ち合わせ)を使用できなかったため次年度使用とした。次年度も引き続き COVID-19 の影響が続き旅費使用が制限される場合でも、可能な限りリモートでの打ち合わせを実施すると共に、予定していた旅費予定分は、衛星データ用の計算機の増強に充てる。なお、もともと計画していたデータストレージは予定通り購入する。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件)
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