研究課題/領域番号 |
20K04010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樫山 和己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10785744)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 白色矮星 / 時間領域天文学 |
研究実績の概要 |
連星白色矮星合体残骸の探査観測に関しては以下の研究を行った。木曽観測所のSchmidt望遠鏡に搭載されたTomo-e Gozenカメラを用いて取得した2Hz測光観測のテストデータを用いて、視野内に写った白色矮星と参照星の同定、測光ライトカーブの抽出、主成分解析を用いた相対測光までを自動で行うデータリダクションパイプラインを構築した。またテストデータから合計数100個の白色矮星についておよそ1時間の2Hz読み出し測光ライトカーブを取得、目視による短周期変動探査とLomb Scargle法を用いた周期変動探査を実施した。テストデータの中に既知の脈動白色矮星、Gaia DR2 1314045729544380288が含まれていたが、およそ800秒周期、振幅10%の振動モードの検出に成功した。その他、新規の有意な変動は検出できなかった。
連星白色矮星合体残骸の進化計算に関しては以下の研究を行った。Kashiyama, Shigeyma, Fujisawa 2019で構築した、連星白色矮星合体残骸候補、IRAS 00500+6713の磁気回転駆動風解をONeコア白色矮星一般に拡張、白色矮星の質量、磁場、回転速度などのパラメータによって観測される温度、光度、質量損失率などがどのように変化するかを系統的に調べた。磁気回転駆動風の光度はおおよそEddington限界でリミットされることを確認、構成した定常解の系列から連星白色矮星合体残骸の観測的特徴の時間進化を計算するためのフレームワークを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連星白色矮星合体残骸の探査観測に関しては概ね計画通りであるが、進化計算に関してはやや遅れている。磁気回転駆動風の定常解をモデルパラメータを変えながら探査する際、数値誤差の範囲で現れる非物理的な解を棄却しなければならない。系統的に解を探査するためにはこの部分を自動化することが望ましいが、モデルパラメータの数が多いため、非物理的な解のバリエーションも多く、それらを棄却するフレームワークの構築に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
連星白色矮星合体残骸の探査観測に関しては以下の研究を行う。木曽観測所のSchmidt望遠鏡に搭載されたTomo-e Gozenカメラを用いて白色矮星を含むターゲット星の2Hz読み出し観測を実施する。合計(3000白色矮星)x(1時間)の測光ライトカーブを取得することが目標である。取得した観測データはR2年度に構築したパイプラインを用いて自動的にリダクションし、目視とLomb Scargle法などを用いて短周期変動の解析を行う。
連星白色矮星合体残骸の進化計算に関しては以下の研究を行う。R2年度に構築した連星白色矮星合体残骸からの磁気回転駆動風解の探査スキームを用いて、合体残骸の合体後の時間進化を系統的に計算、合体する連星の質量や化学特性によって進化がどのように変化するかを調べる。またその観測的特性を既存の観測データと照らし合わせ、銀河系内の合体残骸候補を選定、木曽望遠鏡のTomo-e GozenやSEIMEI望遠鏡のTriCCSを用いた短周期変動探査観測を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的流行によって予定していた海外出張を実施できなかったため、次年度に繰り越す。Tomo-e Gozenカメラを用いて取得した測光サーベイデータ用のHDDを購入予定。
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