研究課題/領域番号 |
20K04014
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
寺島 雄一 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20392813)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ブラックホール / 活動銀河核 / X線 / 赤外線 / サーベイ観測 |
研究実績の概要 |
銀河の中心に存在する巨大質量ブラックホールは、宇宙の様々なスケールにおいて周辺に大きな影 響を与えていることがわかってきている。そのため、宇宙の進化を理解するには、巨大ブラック ホールの性質と進化を網羅的に理解することが必須になっている。本研究では、巨大ブラックホー ルの進化を理解するさいに鍵となる天体である、隠された活動銀河核 (Active Galactic Nuclei) と激 しく質量降着の起こっている AGN の探索を、2019 年 7 月に打ち上げに成功した X 線サーベイ衛星 eROSITA や「すばる」望遠鏡超広視野主焦点カメラ (Hyper Suprime-Cam) などの最新の多波長広 域サーベイデータを用いて行う。特にeROSITAとHyper Suprime-Camはチーム占有のデータを用いることで世界に先駆けて成果をあげられるもの期待できる。また、ヨーロッパのXMM-Newton衛星と米国のChandra衛星は打ち上げ後20年間のデータが蓄積されており、これらも活用することで、これまで選択バイアスのために見つけることが困難であった種族も含め、巨大ブラックホールの全体像を得る。 初年度は、特に(1) eROSITA衛星の初期チーム内公開データを用いた研究の方向性の検討、(2) eROSITA衛星チーム内公開最終カタログを用いた科学研究と論文化(隠された大規模質量降着を起こしている巨大ブラックホール、赤外線で明るい大量に塵で隠された巨大ブラックホール)、(3) XMM-Newton衛星とWISE衛星による赤外線全天サーベイデータのマッチによる隠された巨大ブラックホール探査の準備、XMM-Newton 衛星の紫外線望遠鏡データも組み合わせた質量降着率の大きい巨大ブラックホール探査の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、eROSITA衛星の初期チーム内公開データを用いた研究の方向性の検討を行った。主に大量の物質に隠された巨大ブラックホールの大規模探査と統計的な性質の理解のため、X線と可視光の比で分類し、X線スペクトル形状を調べた。可視光で暗い天体はX線スペクトルにも吸収を受けている兆候が見られている。今後、最終カタログを用いた定量的な解析と論文化を行う。
次に、 eROSITA衛星チーム内公開最終カタログを用い隠された大規模質量降着を起こしている巨大ブラックホールおよび赤外線で明るい大量に塵で隠された巨大ブラックホールのX線と多波長での性質について研究を進め査読論文にまとめた。
最新のXMM-Newton衛星によって得られたX線天体カタログと、とWISE衛星による赤外線全天サーベイカタログデータを、リレーショナルデータベースサーバーで管理し、これらのデータのマッチによる、今後の隠された巨大ブラックホール探査の準備を行った。また、XMM-Newton衛星の紫外線望遠鏡とX線望遠鏡で同時観測された天体のリストを作成し、質量降着率の大きい巨大ブラックホール探査の準備を行った。これらの結果を用いて、重要と思われる種族についてX線スペクトルの解析が進行中である。特に、これまでに数例しか知られていなかった、質量降着率が大きい状態と考えられる 硬X線に比べて軟X線が極端に明るい巨大ブラックホールも着実に多く見つけることができている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年度の結果をもとに、eROSITA衛星で観測された隠された巨大ブラックホール、特に巨大ブラックホールからの放射が大量の物質で覆われていて、可視光域ではほとんど通常銀河のように見えるものを中心に、統計的性質を明らかにしていく。また、これまでに準備したXMM-Newton衛星のカタログを用いたサンプル構築を進め、X線スペクトルと多波長スペクトルのまとめを行う。この際に、隠された巨大ブラックホール、質量降着率の大きい巨大ブラックホールに特に着目して成果をまとめる。またX線スペクトルの形状からは、降着流の物理についての知見も得ることを目指す。
次に、Chandra衛星の最新X線源カタログ、紫外線観測衛星GALEXによる紫外線天体カタログ。すばるHyper Suprime-Camによるチーム内占有サーベイデータも用いた、多波長カタログのマッチを行い、最新カタログデータを総合した、稀な巨大ブラックホール種族の発見と分類の準備を進める。これをもとに、まず、特に特徴的なブラックホール天体についての成果を論文や学会等で発表する。
引き続き、すべてのデータを統合的にまとめるとともに、手法による選択バイアスも考慮し。ざまざまな特徴を持つ巨大ブラックホールの統計的性質を論文等で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症の拡大により予定していた旅費を使用しなかったため。今後の状況により可能であれば旅費として使用する予定である。
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