研究課題/領域番号 |
20K04024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野本 憲一 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 上級科学研究員 (90110676)
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研究分担者 |
鈴木 知治 中部大学, 工学部, 准教授 (20280935)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 初代星 / 超新星 / ブラックホール / 重力波 / 元素の起源 |
研究実績の概要 |
宇宙の初代星がどのような典型的な質量を持ち、どのような超新星爆発を起こして元素合成をしたかを解明することは、現在の天文学の最も重要な課題の一つである。本研究では、重力波で観測されている質量の大きいブラックホールと高度に明るく輝く新しいタイプの超新星とが、初代星の正体とその爆発の手がかりを提供しているというアイデアに基づき、これらのブラックホールや特異な超新星の親星の性質を明らかにし、初代星の質量と進化を解明することを目的とした。 2020年度は、電子対生成によって脈動を起こしつつ重力崩壊する80-140太陽質量(Msun)の星が、初代星や重いブラックホール・特異な超新星の源にどう関係しているかの研究を行った。そのために、80-140 Msun の星の重力崩壊に至る進化を、星の質量と金属量の細かい関数として計算した。特に、連星系での質量移動によってヘリウム星になった場合について、対生成脈動とそれに伴う質量放出を計算した。対生成脈動で形成された星周物質の質量を親星の関数として求め、それ以外の物質はブラックホールに落下するとして、ブラックホールの上限質量は約50 Msun と求めた。重力波観測から推定されるブラックボールの質量との比較を行った。重力波観測からは、ほとんどのブラックボールの質量は50 Msun に近いか、それ以下と推定され、本研究の結果と矛盾しないように見える。このことは、観測されたブラックボールの親星のかなりの部分が、80-140 Msun という質量も持つことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
LIGO/VIRGO によるブラックホールの衝突による重力波の観測の進展により、ブラックホールの質量の観測値と理論値との詳細な比較が可能になったことによるところが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
LIGO/VIRGO によって推定されたブラックホールの質量の中で、一例、理論値の上限より大きいものが報告されている。いわゆるブラックホールの質量のmass-gap の予測と矛盾しているようにも見える。従って、原子核反応の不定性などの星の進化への影響を調べる。同時に、大質量星の質量放出による星周物質の形成を示すことができたので、星周物質の超新星爆発への影響を研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ・ウイルスの蔓延により、出席・発表を予定していた国際会議の開催が中止となったため。 次年度は国際会議が開催されれば出席・発表のための旅費、数値シミュレーションの増強のための物品費の使用を計画する。
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