研究課題/領域番号 |
20K04027
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
太田 直美 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40391891)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 銀河団 / 精密宇宙論 / X線天文学 / 質量関数 / ダークマター / ダークエネルギー |
研究実績の概要 |
銀河団は宇宙最大の天体であり、その形成や進化を理解することは、宇宙そのものの進化を理解することに役立つ。どのような質量の銀河団がいくつあるかを様々な距離に渡って精密に測定できれば、宇宙論モデルに制限をつけることができる。特に、最大の謎であるダークエネルギー の性質の解明に向けて新たな手がかりが得られると期待される。本研究では、SRG衛星搭載eROSITA検出器による過去最大のX線全天サーベイを利用して、多数の銀河団のX線データを統一的に解析し、高精度の質量関数測定を実現することを目指す。これまで、X線領域で精度のよい質量測定を阻んできたのは、銀河団内部の複雑なガス進化に由来するスケーリング則の分散である。そこで、主成分分析から分散の物理起源を特定して取り除き、さらに遠方天体についても同様の解析を行ったうえで、広い赤方偏移範囲に適用可能な質量推定法の確立を目指す。今年度は、eROSITAとすばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam(HSC)が共同で行った初期サーベイ領域に絞って、銀河団スケーリング則の測定を進めた。このように、全天のうち重点領域を詳しく解析することで、ロバストな解析手法を作ることが先決であるためである。この領域には、HSCによりすでに千個近い可視銀河団が発見されており、うち1/5程度からX線放射が検出された。また、主成分分析に用いる物理量導出のためのプログラムを作成し、明るい銀河団の観測データに適用して検証を行った。これまでに、初期サーベイ領域の代表的な銀河団サンプルについてはデータ処理を終えたが、今後全天サーベイデータについても同様の処理を進める。また、国際会議において、将来の銀河団のX線分光観測計画やeROSITA銀河団サーベイとの相補性について、招待レビュー講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
eROSITA検出器とすばる望遠鏡HSCが共同で観測した初期サーベイ領域において、可視銀河団カタログとX線銀河団カタログのクロスマッチを行った結果、予想よりも検出率が低いことがわかった。このことはスケーリング則の分散の解釈に影響を及ぼす可能性があり、天体の中心座標の不定性や銀河団形態の影響を考慮しながら、原因を調査中である。また、初期サーベイ領域の代表的な銀河団サンプルについてはデータ処理を終えたが、第一期全天サーベイのデータ処理に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
まず、eROSITA初期サーベイ領域の銀河団検出率について原因調査を行った後、銀河リッチネスの高い銀河団サンプルを対象にスケーリング則の分散の解釈を進める計画である。ここで、HSCで求められた銀河数から質量を推定し、一方X線データから銀河団の光度を求める。これ以外にも力学状態の良い指標となるX線重心シフトなどの観測量も含めて、主成分分析を行い分散の起源を調べる。これに基づいて精度のよい光度質量関係を導出する。次に、銀河団スケーリング則の赤方偏移依存性の調査に向けて、全天サーベイのデータリダクションを行う。暗い天体については、似た距離や銀河数を持つ天体のデータを複数足し合わせて平均光度を求めるスタッキング解析を行うことで、大量のデータから最大限に情報を引き出す計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたドイツへの渡航許可が得られず、旅費を使用しなかったため。次年度に渡航許可が得られば、旅費として使用する。そうでなければ、研究計画をより効率的に進めるため、計算機の購入にあてる計画である。
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