研究実績の概要 |
本研究は,様々な銀河の中心の巨大ブラックホールへの質量降着及び中心からの質量放出現象を,0.1 pc から100 pc のマルチスケールにわたって探査するものである。このような巨大ブラックホール系は「活動銀河核」と呼ばれている。
本年度はまず,10 - 100 pc スケールにおける3次元構造を,データから直接再構築する方法の確立を行なった。100 pc スケール程度以下において,各ガス雲の速度が,銀河中心の巨大ブラックホールからの距離に比例することを仮定すると,高空間分解能撮像分光データから,ガス雲の3次元幾何学的分布を直接求めることができる。この際,速度と距離の間の比例定数を決める必要があるが,これも,我々の視線方向が特別なものではないと仮定すると求めることができる。この方法を,活動銀河核を持つ近傍の明るい銀河 NGC1068 に実際に適用すると,極方向に「中空のコーン状の領域」が広がっていることが浮かび上がってくる。こうした結果と,0.1 - 10 pc における最近の赤外・サブミリ波干渉計の結果とをあわせて,0.1 pc から 100 pc のスケールにわたって,中心核から離れるにしたがって,中心核から見込む角度が極方向に向かって高くなっていくような(いわゆる flaring geometryの)中空構造を推測するに至った。本年度は,本研究の基礎となるこうした幾何学的構造と速度場構造を整理し,Astrophysical Journal に投稿論文としてまとめた (Miyauchi & Kishimoto 2020, ApJ, 904, 149)。
一方,0.1 pc スケールに対しては,チリの近赤外干渉計装置 GRAVITY を用いて,南天の明るい活動銀河核 IRAS09149-6206 の高速回転ガス雲の構造について,点対称からのずれ/偏りを検出した(GRAVITY Collaboration et al. 2020, A&A, 643, A154)。これは今後の画像再合成の足掛かりとなるものである。
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