研究課題/領域番号 |
20K04033
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
櫻井 隆 国立天文台, 太陽観測科学プロジェクト, 名誉教授 (40114491)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 太陽 / 太陽黒点 / 太陽フレア / 太陽の周期活動 / 太陽活動の地球影響 / 太陽の長期変動 |
研究実績の概要 |
本研究課題の開始以前から継続して行ってきた研究ではあるが、カルシウムK線の波長で撮影された太陽画像から太陽の長期変動を探る研究が、ドイツ、イタリア、フランス、アメリカ、インド、ロシアなど多国にわたる共同研究として、日本からは国立天文台と京都大学が参加して結実し出版できた(T.Chatzistergosほか18名、Astronomy and Astrophysics誌)ことは一つの区切りと考えている。国立天文台のデータについては、データの処理・解析方法を独自に改良・精密化しつつ、別の切り口での研究を今後も進めて行く。 国立天文台で実施している磁場観測については、水平方向磁場の統計的性質や、ロシアの共同研究者と実施した他の観測装置との比較較正について論文を出版した。また磁場観測を含む国立天文台の長期継続観測プログラムについても報告した。 国立天文台が保有する古い太陽観測データのデジタル化については、予定より一部遅れが出ているが、プロミネンスの位置座標の入力は完了し解析中である。 また、太陽黒点の面積分布の統計的性質について考察し、天文学会春季年会において発表した。分布関数がべき乗分布であれば、どんなに大きな黒点も、長く待ちさえすれば現れることになるが、現在までのデータですでに、べき乗分布より急速に減少する、指数関数的振る舞いが見えている、という結果である。言い換えれば、太陽黒点の大きさには実質上上限があり、いくら待っても超巨大黒点は現れ得ないということになる。これは、太陽類似星で観測されている超巨大フレアとの関連で興味深く、今後も検討を続けて行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた出張は国内、国外ともすべて中止した。初期成果の発表を予定していた国際会議については、会議そのものが延期されオンラインでの実施となったので影響は限定的だが、現地での作業を伴う出張は2021~22年度に実施する必要がある。またデータ入力作業についても、アルバイト学生の出勤を大幅に減らさざるを得なかったため遅れている。一方、ゆっくり考える時間ができたのでデータ解析と考察は進み、初期成果を2021年3月の日本天文学会年会で発表でき、論文も準備中である。これらをまとめて現状は(3)やや遅れている、とした。
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今後の研究の推進方策 |
太陽黒点の面積分布、関連して太陽フレアのエネルギー頻度分布については解析がほぼ終わり、論文にまとめる。 国立天文台で長期間にわたり蓄積してきた太陽黒点数のデータについては、2015年に国際太陽黒点相対数の定義の大改訂が行われたあと、これに対応する確定値を出版していなかった。国立天文台における他の太陽活動データの基礎となるものなので早急にとりまとめて出版する。プロミネンスの極移動についてはデータのデジタル化は終了したので、解析を進める。 外国出張、特に観測装置を置いている中国雲南省への出張については、2021年度の後半に可能となれば実施したい。
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