140年以上にわたる太陽黒点面積のデータ(データの提供元は英国グリニッジ天文台と米国・海洋大気庁(NOAA))を統計的に解析した。面積の分布関数がべき乗分布であれば、どんなに大きな黒点も長く待ちさえすれば現れることになるが、現在までのデータですでに、べき乗分布より急速に減少する、指数関数的振る舞いが見えている、という結果を得た。言い換えれば、太陽黒点の大きさには実質上上限があり、いくら待っても超巨大黒点は現れ得ないということになる。一方、太陽表面に同時に存在する黒点の総面積は、個々の黒点が超巨大でなくても、黒点の寿命が長ければ大きくなる。これは、太陽類似星で観測されている巨大黒点が、活発な磁気活動の他に、黒点の散逸過程が抑えられていれば実現しうることを示唆している。これらを主張した論文をAstrophysical Journal誌より出版した。 同様の解析を、40年にわたる太陽フレアのX線観測データ(データの提供元はNOAA)、太陽類似星の可視光のフレア観測データ(NASAのKepler衛星による)についても行なった。フレアのエネルギー分布と大フレアの発生頻度は、近年、宇宙天気予報における極端現象への関心の増加から、注目されている。今回、どちらのデータについても、分布関数は大エネルギー側ではべき乗分布より急激に減少している、即ち太陽フレアにも恒星の超巨大フレアにも規模の上限がある、という結論を得た。この結果はPhysics誌より出版した。 このほか、国立天文台とその前身機関により1917年から蓄積されてきた太陽彩層の活動度を示すカルシウムK線画像の解析、2010年から継続している、太陽全面にわたる磁場測定の国際比較については2020年度に出版し、これらと総合して、本研究課題の目標は達成したと考えている。
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