研究課題/領域番号 |
20K04037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横山 竜宏 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (30397525)
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研究分担者 |
品川 裕之 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 研究員 (00262915)
陣 英克 国立研究開発法人情報通信研究機構, 電磁波研究所宇宙環境研究室, 主任研究員 (60466240)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電離圏 / シミュレーション / プラズマバブル |
研究実績の概要 |
赤道域上空の電離圏で生じる電子密度の擾乱現象は、衛星通信・測位・航法等に深刻な影響を及ぼすことが知られているが、その予測手段は未だ確立されていない。本研究は、これまで個別に開発が進められてきた電離圏の全球モデルと局所モデルを統合し、擾乱現象の発生機構の解明とその予測を実現することを目的とする。 令和2年度には、計算領域を全経度域に拡張し、周期境界条件を仮定しないモデルの開発を行った。計算領域の増加により計算量・時間ともに大幅な増大が見込まれるため、計算の高速化も重要な開発課題であることが明らかとなった。今年度は、主に計算アルゴリズム、特にポアソン方程式を解いて分極電場を求める部分の連立方程式の解法アルゴリズムについて検討を行った。メインの計算アルゴリズムは、これまでに様々な検討を行った結果、BiCG(双共役勾配法)と呼ばれるアルゴリズムから派生したBiCGstarと名付けられたアルゴリズムを使用している[Fujino and Murakami, 2013]。一方、行列の条件数を改善するための前処理については、近似逆行列をノイマン級数で構成する手法を用いている。この多項式の項数を多く取るほど逆行列の精度が高くなるため反復回数の減少が期待される一方、1反復当たりの計算量が増加するため、ある最適な項数が存在すると考えられる。ノイマン級数の項数に対する反復回数と実行時間を検討した結果、項数が少ない間は反復回数と実行時間ともに急激に減少するが、反復回数の減少効果は徐々に鈍化し、実行時間は項数50付近から増加に転じる。前処理を行わない場合に比べて実行時間は約1/2に減少しており、この前処理を導入することで大幅な実行速度の向上が見込まれる。今後は、昨年度に開発した全経度域をカバーするモデルに本前処理手法を導入し、全球モデルとの結合に向けた開発を継続して実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍において、引き続き研究分担者との打ち合わせが不十分であった。今年度は国内の移動に関しては徐々に制限の緩和が期待されるため、打ち合わせを綿密に行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
全球モデルの電場計算ルーチンに、2020年度に開発した不等間隔グリッドモデルを導入し、電場の大規模構造とプラズマバブルを生成させる微細構造を同時に再現することを目指す。計算アルゴリズムの高速化が実現できたことから、スムーズに実現できることが期待される。 なお、研究の進捗と予算執行状況から考えると、次年度以降への事業期間延長は止むを得ない状況と考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に引き続き、コロナ禍で海外出張ができない状況であったため、ほぼ全額が次年度使用額がとなっている。補助事業期間の延長を想定して今後の研究を進展させる予定である。
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