研究課題/領域番号 |
20K04041
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三宅 洋平 神戸大学, 計算科学教育センター, 准教授 (50547396)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 月惑星プラズマ / 境界領域プラズマ / 超高層物理学 / 固体天体 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究課題では、固体天体表面でのプラズマ損失を起源とするプラズマの乱れが、如何に、もしくはどの程度遠方まで波及するか、という学術的な問いに、長距離運動論プラズマシミュレーションを用いて取り組む。2020年度の実施内容を下記に示す。 ①研究手段としてParticle-in-Cell法に基づくプラズマ数値シミュレーションを使用する。固体・宇宙プラズマ境界層の長距離シミュレーションを実施する準備段階として電磁界ソルバーの改良を実施した。これまで用いていた陽解法では、時間刻み幅が解析対象となる物理素過程の特徴時間に照らして過剰に小さく設定する必要があり、計算時間が増大する結果となっていた。この問題を解決するため、電磁界ソルバーに半陰解法を導入した。これにより、時間刻み幅は上述のクーラン条件ではなく、興味ある現象を十分に解像できる値に設定することができ、大幅に計算時間を短縮することが可能となった。当該定式化を用いると各格子点上の磁界の時間発展を表現する連立一次方程式が得られる。先行研究では、これを共役勾配法に基づく反復法を用いるケースが多いが。我々は上式を離散フーリエ空間に写像した上で、直接法により求解した。収束計算を排した本手法により、特に並列計算上で計算を高速化できることを確認した。 ②沿磁力線方向に長くとった3次元計算領域の中央に、人工衛星やロケットを想定した導体物体を配置し、物体から伸展するプラズマじょう乱に着目した大規模計算機実験解析を実施した。まず物体と接続された磁力線に沿って、プラズマの低密度領域が形成されることを確認した。一方で、物体と接続しない磁力線上では密度低下は起こらなかった。結果として磁力線に垂直方向に勾配を持つプラズマ構造を実際的な条件設定の元で作成することに成功した。またこの計算を長時間継続することにより、方位角方向に静電的な波動の成長が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の上期は、新型コロナウィルスの感染拡大に対応して学務に対するエフォートを増加させる必要が生じたため、本研究課題の実施に遅れが生じたが、下期よりプラズマデバイ長の数100~1000倍の長距離シミュレーションに必要な計算アルゴリズムの構築と、人工宇宙飛翔体に関連した固体プラズマ相互作用の計算シミュレーションに関して、一定の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、開発した数値シミュレーション手法を活用し、月惑星環境における固体プラズマ境界層領域での電磁じょう乱の計算機実験を開始する。また人工衛星表面でのプラズマ損失に関連して形成された密度勾配構造内部の粒子ダイナミクスと、それによって形成される電流構造を同定し、線形分散解析と照らし合わせることで不安定となる波動モード(予想では低域混成波動)を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主に2020年度に予定していた学術講演会の延期などによるものである(旅費および参加登録費)。これらは2021年度に(オンライン形式を含めて)開催される国内外会議での成果発表に利用する計画である。
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