金星探査機「あかつき」に搭載されたIR1カメラが取得した画像に含まれる迷光について,その影響を補正する方法の検討をおこなった.金星の地表が射出する熱放射を解析して地表に関する情報を抽出するためには,金星夜面で観測される熱放射よりも圧倒的に明るい金星昼面(夜面の10000倍以上)からの迷光の補正が必要不可欠である.これまで迷光の規則性を探ってきたが,その全容の解明には至っておらず,IR1カメラが取得した画像に含まれる迷光を完全に取り除くことはできていない.迷光を補正する方法の検討は今後も引き続いて測器のPIと協力しておこなっていくが,今後はそれに並行して迷光の影響が比較的に小さい画像を用いて金星地表に関する情報の抽出を試みていく. 前年度に整備した計算環境を利用して,金星大気の放射輸送計算を複数おこなった.そのうちの一つは地形と熱放射の関係を調べるためのもので,金星標準大気モデル(VIRA)を外挿して高度0km以下の大気モデルを作成し,それを用いて地表高度が熱放射に及ぼす影響を評価する計算をおこなった.また,典型的とされる金星大気を仮定した放射輸送計算に加えて,大気組成,大気温度減率,雲水量,粒径,などを変更した計算を複数おこない,大気の変動が放射輝度に及ぼす影響を定量的に評価した.あかつきIR1カメラが観測する熱放射は,主に金星下層雲の変動の影響を受けると考えられていたが,上層雲の変動もまた熱放射の強度に無視できない影響を及ぼすことが明らかとなった.
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