研究課題/領域番号 |
20K04043
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
土屋 旬 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (00527608)
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研究分担者 |
土屋 卓久 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 教授 (70403863)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 氷惑星 / 高圧 / 第一原理計算 / 相図 |
研究実績の概要 |
H2Oは太陽系惑星の主要な構成物質のひとつであり、高温高圧下における挙動の解明は地球や惑星科学において重要な課題である。H2Oは化学的に単純な組成をもつにもかかわらず、高圧下における相図、状態方程式や基本的物性に一致した見解が得られていない。特に、惑星内部のような高温高圧下においてH2Oは酸素格子中を水素が液体のようにふるまう超イオン相が存在すると考えられている。しかし、この超イオン相の構造自体も未だ十分解明されていない。本研究はH2Oの高温高圧下における相図、特に超イオン相の安定構造を解明するために、第一原理電子状態計算法と熱力学積分法を組み合わせ自由エネルギー計算法を開発することである。特に熱力学積分を行う上での参照系として酸素は3次元調和振動子、水素は理想気体と設定することによりこれまで不可能であった超イオン相の自由エネルギー計算が可能となる。 現在、昨年度開発した超イオン相に対応した第一原理熱力学積分プログラムを用いて氷超イオン相の自由エネルギー計算を実行中である。昨年度問題となった基準振動数の設定も物理的に合理的な値を設定できた。酸素副格子の構造は体心立方格子と面心立方格子、六方細密充填構造に対応して計算が可能になった。現在圧力・温度条件(100-500 GPa, 2000-8000 K)を変化させ、どの程度λ(今のところλ=0, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2, 0.5, 0.9, 1.0を設定)を離散的にとればこれらの異なる酸素副格子超イオン相間での有意な自由エネルギー差が得られるか、精度を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由で本研究はおおむね順調に進展していると言える。 ・昨年度問題となった固相(体心立方酸素副格子)の参照系について,3次元調和振動子の基準振動数として合理的な値を設定し(2.0 Ry/bohr^2)、設定どおりの振動数でシミュレーションが問題なく実行できることが確かめられた。 ・実際にλを0から1の間で(λ=0.0, 0.01, 0.05, 0.1, 0.2, 0.5, 0.9. 1.0)で計算を実行し、参照系(酸素:調和振動子、水素:理想気体)から現実(第一原理)系の間でエネルギーが連続的に変化していることが確認できた。また計算プログラムを改良し、参照系の酸素副格子を体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造に設定し実行することができた。 ・熱力学積分については、第一原理分子動力学計算を長時間実行し、エネルギー平均値を得る必要があるため、豊富な計算機資源を必要とする。今年度も、並列計算機を1基導入し、プログラムの移植等を行うことができた。 ・計算条件を圧力温度(100-500 GPa, 2000-8000 K)を変化させ、超イオン相の酸素副格子の構造変化が自由エネルギーの値から確認できるか検証中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進に関する課題は、得られた結果の検証と研究開発の成果発表を可能な限り行うことである。 スーパーコンピューター(名古屋大学スパコン利用申請済)利用により、より高速かつ大規模にシミュレーションを行う予定である。 成果発表は5月下旬の日本地球惑星科学連合大会にて行う予定であり、これまで行えなかった計算手法と結果の議論を行う予定である。また、最終的には結果をまとめ論文発表を行う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により学会や研究会がオンラインに変更になり、旅費が計上されなかった。次年度、対面の研究会等が実施される場合は旅費として使用予定である。
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