研究課題/領域番号 |
20K04044
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
小郷原 一智 京都産業大学, 理学部, 准教授 (50644853)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火星 / ダストストーム |
研究実績の概要 |
これまで火星のダストストームは漠然と単一の大気現象だと思われてきたが,その発生メカニズムはダストストームごとに全く異なることが近年の観測によって示唆された.それに伴い,水蒸気やダストの鉛直輸送量もダストストームによって大きく異なることが予想される.本研究は,形状や模様などの外見的特徴をもとに火星ダストストームを数種類に分類し,その種類ごとにダストストームの背景にある大気現象を特定する初の研究である. 1年目は,ダストストームを検出し外見的特徴に基づいて分類する計画であった.深層学習を 用いたダストストーム領域分割手法( Gichu and Ogohara 2019; Ogohara and Gichu, 投稿準備中)を用いて,探査機Mars Global Surveyor(MGS)が1999年から2005年までに観測した2地点(Arcadia Planitia西部,およびHellas Basin)の火星画像からダストストームを抽出した.形状,模様といった外見的特徴を自動認識するまでには至っていないが,発生場所(緯度経度)と面積を自動で計測した.Kulowski et al. (2017)が報告しているダストストームの季節変化と整合的な検出結果であった.上記2地点は彼女らがPlume-like dust stormと分類したダストストームの頻発地域であるので,当該地域におけるダストストームはよく似た模様を示している.したがって,模様を使って分類を試みるのはあまり意味がない可能性がある.次年度に予定されている周囲の大気環境との比較を見据えて,新しい火星再解析データセットEMARSを取得し,処理しやすい時間軸への変更,および等圧面高度データの作成を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
規模,外見的特徴,形状と言ったダストストームの特徴をもとにしたダストストームの分類には至っていない.しかし,現在のところ模様を使って分類する意味はさほどないことと,形状が似ていると思えるダストストームが多くないことから,地域を特定してダストストーム検出を行う場合にはダストストームの自動分類は不要であると考えられる.むしろ,異なる地域をまたいで分析を行う場合に,必要となってくる可能性がある.また,次年度に使用する火星大気再解析データの準備がほぼ完了している.以上のことから,おおむね順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
Arcadia Planiti西部,およびHellas Basinを対象に,大気データと合わせてダストストーム発生メカニズムを特定する.火星大気再解析データMACDAを用いて各種類のダストストームに典型的な周囲の大気条件を調査する予定であったが,MACDAよりも長期間にわたって整備されているEMARSを使用する予定である.すでに,処理しやすい時間軸への変更,および等圧面高度データの作成を行っている.EMARSに含まれる地表気圧や気温,風速などの分布と,ダストストームの発生頻度や規模を比較することで,ダストストームのメカニズムを種類ごとに明らかにする.例えば,中緯度で2-3日ごとに,決まって低気圧の西側にダストストームが発生するのであれば,寒冷前線に伴う強風で発生する可能性が高い.その上,渦形状を取っていれば,その発生メカニズムとして竜巻が候補に挙がる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのため,予定していた学会の旅費が不要になった.R3年度は米国に短期滞在する計画であるが,もし滞在可能な場合には滞在期間を延ばす.海外出張のめどが立たない場合には,R4年度に延期する.また,論文をオープンアクセスとしたり,購入を予定しているマルチコア計算機を1段階グレードアップしたりすることで,有効利用する.
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