研究課題/領域番号 |
20K04046
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
佐川 英夫 京都産業大学, 理学部, 教授 (40526034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 惑星大気 / アルマ望遠鏡 / 火星 / 金星 / 干渉計 |
研究実績の概要 |
本研究課題ではアルマ望遠鏡を用いて取得した火星・金星データの解析を実施している。 2022年度は、アルマ望遠鏡の惑星観測データに内包されるフラックス較正の問題を、自己相関データ等を用いて補正する手法を確立させ、生データ(複素ビジビリティ)からのキャリブレーションおよび画像合成等を再処理することを行った。再処理後の火星データ(アタカマコンパクトアレイACAによる観測データ)から、火星大気高度40-60 km付近の風速場を求めたところ、大気大循環数値モデル(GCM)による数値実験で得られる結果と定性的によく一致する結果が得られた。この一連の研究結果を、火星大気研究の国際研究集会(2023年3月)にて発表した。 次のステップとして、アルマ望遠鏡の12mアンテナの配列を用いて、より高い空間分解能で取得された火星データからの風速場導出を行った。こちらの結果では、干渉計観測特有の「広がった空間構造をフィルタリングする」性質から、ある特定の空間周波数成分が現実の火星大気風速場から抜け落ちた結果が得られている。そのため、一見するとGCMの数値実験結果とは似ても似つかない観測結果が得られている。この観測結果をGCMの数値実験結果とより正しく比較する際には、GCMの計算結果からアルマ望遠鏡の観測特性と同様の空間周波数成分をフィルタリングしておく必要が有る。それらの比較・評価方法の手法を整備した。 また、同様の研究を、金星大気のアルマ望遠鏡観測データに対しても進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度から、Covid-19による影響での海外の共同研究者との協働ペースがやや停滞している。 進捗リカバリーを目的として、共同研究者の所属機関に複数日滞在しての直接議論および投稿論文化に向けた共同作業の場を設けていたが、先方のCovid-19による影響もあり、次年度へ順延となった。
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今後の研究の推進方策 |
アルマ望遠鏡データのデータ処理およびそれらのデータからの火星・金星上層大気風速場の導出は、2022年度末の時点で概ね終了しており、現在は大気大循環モデルの数値実験結果と比較することで、火星・金星大気循環に対する考察に注力している。その考察の中で、大気大循環モデルのモデルパラメータ依存性を評価する必要が有り、この課題には共同研究者の協力が必須となる。この点に関しては、作業効率を確保するため、これまでのようなオンラインベースの議論に加えて、複数日の直接議論および共同作業を実施する機会を設ける。 また、研究期間を一年間延長したことにより、2023年12月に予定されているアルマ望遠鏡の運用開始十周年を記念した国際研究集会へ本研究成果を投稿することも可能となった。そのような国内外の研究者が広く一堂に集う場で、本研究の内容を積極的に発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外の共同研究者の所属研究期間に出張し、直接議論および共同研究作業を集中的且つ効果的に進める予定であったが、先方のCovid-19による影響などから、年度を跨いだ2023年に順延せざるを得なくなった。そのための海外出張費を次年度分(研究期間を一年間延長)として繰り越すこととした。
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